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ID番号 00020
事件名 解雇無効確認請求事件
いわゆる事件名 杵島炭砿事件
争点
事案概要  共産主義者およびその同調者であることを理由とする解雇の効力について争われた事例。
参照法条 労働基準法3条
体系項目 労基法の基本原則(民事) / 均等待遇 / 信条と均等待遇(レッドパージなど)
裁判年月日 1958年4月22日
裁判所名 佐賀地
裁判形式 判決
事件番号 昭和28年 (ワ) 253 
裁判結果
出典 労働民例集9巻2号168頁
審級関係
評釈論文 萩沢清彦・ジュリスト169号63頁
判決理由  一、本件解雇は「共産主義者又はその同調者であること」を基準としており右解雇基準は憲法第十四条に違反する不平等のものであり、同時に労働基準法第三条、民法第九十条に違反し無効であるとの原告等の主張について、
 もとより単に共産主義者及びその同調者たることを解雇基準とすることは、信条そのものを対象として解雇するのであるから、かかる基準に基く解雇は憲法第十四条労働基準法第三条に違反し無効といわねばならない、然るに成立に争のない甲第一号証の三、証人A(一回)の証言によれば、被告会社は昭和二十五年十月頃、石炭産業は国の基幹産業にしてその運営如何が国家経済に及ぼす影響は極めて大きく、従って炭砿経営者としては事業の健全なる運営に対して重大な責任を有すること、今般国際情勢の緊迫化客観状勢の変化に伴い、従来に倍して企業防衛、事業の円滑なる運営のため必要な措置を採るも已むを得ないとし、ここに上記必要措置として一部砿員を解雇するに至ったが、同年十月十六日、被告会社B砿業所長より同砿業所砿員労働組合長及び五坑労働組合長に宛てて発せられた申入書によれば、単に共産主義者及びその同調者たることに止まらず、右当該者であって而も常に煽動的言動をなし、他の従業員に悪影響を及ぼす者、円滑なる事業運営に支障を及ぼす者、又はその虞れのある者及び事業運営に協力しない者の行動を解雇基準としたものであるから、右解雇基準を原告等主張の如く違憲、無効ということは当らないといわねばならない。