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ID番号 00033
事件名 解雇無効確認請求事件
いわゆる事件名 石川島播磨重工業事件
争点
事案概要  レッドパージによる解雇の効力が争われた事例。
参照法条 労働基準法3条
民法90条
体系項目 労基法の基本原則(民事) / 均等待遇 / 信条と均等待遇(レッドパージなど)
裁判年月日 1963年9月19日
裁判所名 神戸地龍野支
裁判形式 判決
事件番号 昭和35年 (ワ) 81 
裁判結果 (控訴)
出典 労働民例集14巻5号1181頁
審級関係 控訴審/00656/大阪高/昭41. 4.22/昭和38年(ネ)1380号
評釈論文
判決理由  当時占領軍が日本共産党に対し少からぬ敵意を抱いていたことは、当裁判所に顕著であり、また、成立につき当事者間に争のない乙第八号証によれば、A造船所は昭和二一年八月一三日付連合国最高司令官の日本政府宛の覚書により、賠償指定工場に指定され、同司令官の保管、統轄の下に置かれたことが認められるが、こうした事情も、特定の労働者が日本共産党員又はその同調者であること自体を解雇事由となすことを可能ならしめる決定的事由とはならないであろう。結局、ある労働者に対する解雇が是認されるかどうかは、彼がいかなる政治上の団体に属し、又はいかなる信条を抱いているかを考慮の外において決定すべき事項といわねばならないところ、原告Xについては、過去における企業破壊活動の具体的事跡又はその顕著な蓋然性、勤務成績の不良、労働に著しい障害を来たすところの精神的又は肉体的障害、その他解雇を理由あらしめるに足る特段の事情は、本件の全証拠をもってしても、これを認めることを得ず、かえって、同原告本人の供述によれば、こうした事情がなかったことを窺知するに十分である。
 (中 略)
 以上要するに、会社は、労働基準法第三条に違反し、原告Xが日本共産党員ないしは共産主義の信奉者であることを唯一の理由として、これを解雇したと認定するのが相当であり、かかる解雇は、民法第九〇条にいわゆる『公ノ秩序又ハ善良ノ風俗』に反するものとして、無効と断じなければならない。したがって、同原告とA造船所の包括承継人たる被告との問には、その後格別の雇傭関係消滅事由が生じたことの主張、立証もない以上、今なお雇傭関係が継続しており、同原告は被告の従業員たる地位を保有しているものと断ずべきである。