全 情 報

ID番号 00038
事件名 仮処分申請事件
いわゆる事件名 近江絹糸紡績事件
争点
事案概要  休業中の他工場の保安要員への配転を拒否したために懲戒解雇された原告が、本件配転は原告の思想信条を理由とする差別的取扱で労働基準法三条に違反し無効であるとして、被告会社の従業員として扱い賃金を支払う旨の仮処分を求めた事例。(請求認容)
参照法条 労働基準法3条,2章
体系項目 労基法の基本原則(民事) / 均等待遇 / 信条と均等待遇(レッドパージなど)
配転・出向・転籍・派遣 / 配転命令の根拠
裁判年月日 1965年4月22日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 昭和39年 (ヨ) 3768 
裁判結果
出典 労働民例集16巻2号293頁
審級関係
評釈論文
判決理由  〔労基法の基本原則―均等待遇―信条と均等待遇(レッドパージなど)〕
 以上の点を綜合すると、本件転勤は従前から加古川工場の工員として働いていた申請人両名にとっては、全然職種を異にし、しかも一般に何人でも嫌忌するものと認められる火の消えたような休業中の他工場の管理を職務内容とする保安要員への配転であり、相当重大な勤務条件の不利益な変更であると考えられるのにかゝわらず、適正な配慮のもとになされなかったものであり、右転勤命令はいずれも、申請人らの主張するとおり申請人らが共産党の支持する思想を信奉することを理由としてなされた差別的取扱であることが一応推測できる。
 〔配転・出向・転籍・派遣―配転命令の根拠〕
 一般に労働契約は、労働者がその労働力の使用を包括的に使用者に委ねることを内容とするものであるから、使用者は労働者が給付すべき労働の態様を決定する権限を有するものであり、従って使用者が業務の都合により労働者に配置転換ないし転勤を命ずることは、それが労働諸法に違背する場合及びそれが労働者の生活関係に重大な影響を与えずにはおかないことから認められる合理的な制約に違背しない限り適法であるといわなければならない。