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ID番号 00061
事件名 賃金請求事件
いわゆる事件名 岩手銀行事件
争点
事案概要  給与規程が世帯主には家族手当等が支給されるが配偶者が扶養控除対象限度額を超える所得を有する場合には夫たる行員にのみ右手当が支給されると規定していたので右手当を支給されなかった女子行員が右規程を違法として右手当の支払を求めた事例(認容)。
参照法条 労働基準法4条
体系項目 労基法の基本原則(民事) / 男女同一賃金、同一労働同一賃金
裁判年月日 1985年3月28日
裁判所名 盛岡地
裁判形式 判決
事件番号 昭和57年 (ワ) 103 
裁判結果 認容(控訴)
出典 労働民例集36巻2号173頁/時報1149号79頁/タイムズ550号127頁/労働判例450号62頁/労経速報1215号3頁
審級関係
評釈論文 ・季刊公企労研究64号120~122頁1985年9月/奥山明良・判例タイムズ559号78~81頁1985年9月1日/宮城邦彦・法と秩序15巻5号42~48頁1985年11月/小西國友・判例評論332〔判例時報1201〕54~60頁1986年10月/新谷眞人・季刊労働法136号207~209頁1985年7月/青山武憲・法と秩序88号10~15頁1986年1月/浅倉むつ子・月刊法学教室59号126~127頁1985年8月/渡邉裕・季刊労働法137号94~101頁1985年10月/野川忍・ジュリスト893号13
判決理由  右に検討したところによると、結局、本件争点部分は、みなし規定と解した場合はもちろんのこと、推定規定と解した場合にも現行の制度を前提とすれば、夫たる行員と比べて妻たる行員を著しく不利な立場に立たせる結果をもたらすものであって、女子であることのみを理由として妻たる行員を著しく不利に取り扱う規定であるといわざるをえない。
 (三)そこで、次に、本件争点部分のような給与規程を置くことに合理的な理由があるかどうかについて検討する。
 被告は、この点について、家族手当の支給基準についてあらかじめ夫婦のいずれか一方に特定しておくことは受給資格者間の不平等・不公平な取扱いや種々の弊害を防止するために合理的な理由があり、その場合、妻たる行員に特定するよりも夫たる行員に特定する方が社会的許容性がある旨主張する。
 ところで、《証拠略》によれば、被告における家族手当の支給は、扶養親族を有する行員に対してその家計を補助することを目的としてなされていることを認めることができる。被告は、前記のとおり家族手当の受給資格者を「世帯主たる行員」としているが、それを「自己の収入をもって、一家の生計を維持する者」と定義しているのも支給の右目的に沿ったものと解することができる。そして、右目的に徴すると家族手当自体の性格としては男女という性別とは無関係な手当であると解するのが相当である。そうすると、仮に被告が主張するように家族手当の支給基準を定めること自体には合理性が認められるとしても、それは、支給基準の内容として夫婦のいずれか一方にあらかじめ特定するという男女の性別に着目した基準を設けることの合理性を根拠づけるものにはなりえないと解さざるをえない。
 (中 略)
 (四)右に検討したところによると、家族手当も労基法四条の「賃金」に該当することは明らかであるから(同法一一条、三七条)、本件争点部分は、労基法四条、九二条により無効であると解される。