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ID番号 00065
事件名 不当労働行為救済命令取消請求事件
いわゆる事件名 十和田観光電鉄事件
争点
事案概要  「公職選挙による選挙に立候補しようとするときは、会社の承認をえなければならない」旨の就業規則に違反して右承認を得ずして立候補し懲戒解雇された者の右解雇が地労委で不当労働行為とされたことにつき使用者が救済命令取消を申立てた事例。
参照法条 労働基準法7条
体系項目 労基法の基本原則(民事) / 公民権行使 / 公民権行使と休職・解雇
裁判年月日 1962年4月10日
裁判所名 青森地
裁判形式 判決
事件番号 昭和34年 (行) 18 
裁判結果
出典 労働民例集13巻2号416頁
審級関係
評釈論文 山口浩一郎・ジュリスト282号90頁
判決理由  労働基準法第七条は、「使用者は、労働者が労働時間中に、選挙権その他公民としての権利を行使し、又は公の職務を執行するために必要な時間を請求した場合においては、拒んではならない。但し、権利の行使又は公の職務の執行に妨げがない限り、請求された時刻を変更することができる。」と規定し、同法第一一九条によって、右第七条違反行為について罰則を規定して右第七条の規定の内容の実現を期し、もって、公民権の行使、すなわち国または地方公共団体の公務に参与し得る権利の行使及び公の職務の執行、すなわち、法令に根拠を有する公の職務の執行を保障しているのである。そして、右第七条に規定する公民権とは、参政権をもって主たるものとするところ、右第七条はその一例として選挙権の行使を明文をもって保障しているが、公職選挙法による被選挙権も、公務員のように特別の規定ある場合は格別、枢要な参政権の一であるから、選挙権と同様、右第七条の公民権に含まれるものと解すべきである。従って、本件就業規則第一六条第一号は、労働基準法第七条が使用者に対し、労働者から公民権の行使及び公の職務の執行のための必要な時間の請求があったときは、その拒絶を禁止することによって、公民権を保障していること、すなわち、使用者に対する禁止規定たることに着目すれば、あながち無効のものであるということはできない。しかし、使用者は、右就業規則の規定にかゝわらず、労働者から公職選挙法による選挙についての立候補の承認を求められた場合には、これを拒み得ないものと解するのが相当である。