全 情 報

ID番号 00119
事件名 賃金支払仮処分請求事件
いわゆる事件名 川岸工業事件
争点
事案概要  子会社の解散に伴い解雇された従業員らが、右子会社と親会社の人的物的関係からみて、親会社はいわゆる「法人格否認の法理」の適用を受けるとして親会社に対し解雇直前一ケ月の未払賃金の仮払を求めた仮処分申請事件。(申請認容)
参照法条 労働基準法24条
体系項目 労基法の基本原則(民事) / 使用者 / 法人格否認の法理と親子会社
裁判年月日 1970年3月26日
裁判所名 仙台地
裁判形式 判決
事件番号 昭和42年 (ヨ) 405 
裁判結果 認容
出典 労働民例集21巻2号330頁/時報588号38頁/タイムズ247号127頁/金融商事211号17頁
審級関係
評釈論文 伊藤博義・月刊労働問題146号124頁/伊藤博義・法学34巻3号89頁/伊藤博義・労働法の判例〔ジュリスト増刊〕56頁/橋詰洋三・季刊労働法76号106頁/三島卓郎・労働経済判例速報721号22頁/志村治美・法律時報42巻10号157頁/秋田成就・ジュリスト483号153頁/龍田節・判例評論140号32頁/蓮井良憲・労働判例百選<第三版>〔別冊ジュリスト45号〕114頁
判決理由  子会社に対する親会社の法人格の独立性が一定の債権者に対する関係で限界を画され子会社の責任を親会社において自からの責任として負担すべきものとされるための条件としては、第一に親会社が子会社の業務財産を一般的に支配し得るに足る株式を所有すると共に親会社が子会社を企業活動の面において現実的統一的に管理支配していること、第二に株主たる親会社において右責任を負担しなければならないとするところの債権者は、親会社自から会社制度その他の制度の乱用を目的として子会社を設立し又は既存の子会社を利用するなどの事情がない限り子会社に対する関係で受動的立場にあるところの債権者に限ること、しかも親会社と子会社との間に右第一の支配関係があるときは子会社の受動的債権者に対する債務関係は常にしかも重畳的に親会社において引受けている法律関係にあると解するを相当とする。
 (中 略)
 債権者らはその実体においてA会社の一方的意思により因果的に支配された受動的債権者というべきである。しかも前記第一の〔5〕の事実および第二の一・二の認定事実によれば、債務者Y会社と申請外A会社との関係は、親会社であるY会社が子会社であるA会社の業務財産を一般的に完全に支配し得る全株式を所有しているうえ、親会社であるY会社が子会社であるA会社を企業活動の面において現実的統一的に完全に管理支配していることが明らかであるから前記第三の(四)で指摘する第一の条件を完全に具備しているということができる。
 (中 略)
 債権者らの有する賃金債権について債務者Y会社は前記法人格否定の法理の適用を受け、その支払義務を負担していると共に前記第一の〔1〕の事実によればその債権の保全の必要性が存在することは明白である。