全 情 報

ID番号 00201
事件名 仮処分申請事件
いわゆる事件名 欧州共同体委員会事件
争点
事案概要  欧州共同体委員会に採用された申請人が三ケ月の試用期間満了前に解雇されたため、地位保全と賃金支払の仮処分を申請した事例。(却下)
参照法条 労働基準法20条,21条
民法1条3項
体系項目 労働契約(民事) / 試用期間 / 法的性質
解雇(民事) / 労基法20条違反の解雇の効力
裁判年月日 1982年5月31日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和55年 (ヨ) 2305 
裁判結果 却下(控訴)
出典 下級民集33巻5~8合併号875頁/労働民例集33巻3号472頁/時報1042号67頁/タイムズ468号65頁/労経速報1121号12頁/労働判例388号42頁
審級関係 控訴審/03178/東京高/昭58.12.14/昭和57年(ネ)1536号
評釈論文 花見忠・ジュリスト796号111頁/坂本重雄・判例評論289号51頁/小寺彰・昭和57年度重要判例解説〔ジュリスト792号〕268頁/石田真・季刊労働法126号126頁/野田進ほか・阪大法学129号111頁
判決理由  〔労働契約―試用期間―法的性質〕
 ところで、右のような試用期間中の解約権の留保は、使用者が労働者を採用するにあたり、採否決定の当初においては、その者の資質、性格、能力その他適格性の有無に関連する事項について必要な調査を行い、適切な判定資料を十分に蒐集することができないため、後日における調査や観察に基づく最終的決定を留保する趣旨でされるものと解されるのであつて、今日における雇用の実情にかんがみるときは、一定の合理的期間の限定の下にこのような留保約款を設けることも、合理性をもつものとしてその効力を肯定することができるというべきであり、それゆえ、右の留保解約権に基づく解雇は、これを通常の解雇と全く同一に論ずることはできず、前者については、後者の場合よりも広い範囲における解雇の自由が認められてしかるべきものといわなければならない。そして、この留保解約権の行使は、右のような解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的な理由が存在し、社会通念上相当として是認することができる場合に許されるものと解すべきである(最高裁昭和四八年一二月一二日大法廷判決・民集二七巻一一号一五三六頁参照)。
 〔解雇―労基法20条違反の解雇の効力〕
 そこで次に、本件解雇の効力の発生時期について検討するに、被申請人は、申請人に対して昭和五五年六月二〇日に契約の終了を予告したから、本件就業規則第五条により、申請人は同月三〇日をもつて被申請人の職員としての身分を喪失した旨主張しているが、我国の労働基準法第二一条第四号、第二〇条によれば、申請人のような試用期間中の者であつても一四日を超えて引き続き使用されている場合には、三〇日前に解雇予告をすることが必要とされており、我国の現行の労働基準法に牴触する本件就業規則の条項は、前判示のとおり、その牴触する限度において効力がなく、労働基準法が適用されると解されるから、右被申請人の主張は採用することができない。しかしながら、同法二〇条に定める期間に満たない予告期間を設けてなされた解雇予告も絶対的に無効なのではなく、同条の期間を経過することによつて解雇の効力が発生すると解するのが相当であるから、被申請人が申請人に対してした本件解雇の効力は、同年七月二〇日の経過によつて発生すると解するのが相当である。