全 情 報

ID番号 00217
事件名 仮処分申請事件
いわゆる事件名 名古屋放送事件
争点
事案概要  女子従業員の定年を三〇歳とする旨の就業規則の規定にもとづき、退職したものとして扱われた女子従業員が、雇用契約上の地位保全賃金仮払の仮処分を申請した事例。(申請認容)
参照法条 労働基準法3条
民法90条
日本国憲法14条,24条
体系項目 労基法の基本原則(民事) / 均等待遇 / 女子若年定年制
裁判年月日 1972年4月28日
裁判所名 名古屋地
裁判形式 判決
事件番号 昭和44年 (ヨ) 483 
裁判結果 認容
出典 労働民例集23巻2号313頁/時報678号97頁/タイムズ280号286頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労基法の基本原則(民事)-均等待遇-女性若年定年制〕
  本件のように就業規則による定年退職制は、退職に関する労働条件であることが明らかであり、本件女子定年制が男子の五五才に対し女子について三〇才と著しく低いものであり、かつ三〇才以上の女子であるということから当然に労働者としての適格性を失うとは即断できないから、もとよりそれは性別を理由とする差別待遇にほかならない。そして、性別による差別待遇が退職という労働契約終了の効果をきたすものであってみれば、労務の提供によって生活を維持している労働者の生存権、労働権をも侵害するものであるから、憲法一四条、二五条、二七条の精神にもとることは明らかである。従って他にこの差別を合理的に理由づけるにたる特段の事情がない限り著しく不合理な性別による差別待遇であり、民法九〇条による公序良俗違反として無効というべきである。
 (中 略)
 思うに、女子若年定年制に合理的理由ありと認められる場合とは、特定の業種または業務に必須の年令的制約が伴い、かつ非適格者に他業種または他業務への配転の可能性のない特殊の場合であろうが、本件においては被申請人の全立証によるも本件女子定年制がかかる場合にあたるとは認められない。
 従って本件女子定年制は、女子従業員を男子従業員の五五才定年制と著しく不利益に差別するもので、公序良俗に反し無効といわなければならない。