全 情 報

ID番号 00230
事件名 仮処分併合事件
いわゆる事件名 朝日新聞社事件
争点
事案概要  新聞社で原稿の持ち運びをする原稿係給仕について一般の社員と区別して若年定年制を設け、それに基づき右原稿係一六人を「解雇」したのに対し地位保全の仮処分を申請した事例。(一四人につき申請認容)
参照法条 労働基準法2章
体系項目 退職 / 定年・再雇用
裁判年月日 1961年7月19日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 昭和31年 (ヨ) 48 
昭和32年 (ヨ) 3146 
昭和33年 (ヨ) 456 
昭和34年 (ヨ) 476 
裁判結果 一部認容 一部却下
出典 労働民例集12巻4号617頁/時報270号11頁
審級関係
評釈論文 山口浩一郎・労働経済旬報494号32頁/片岡昇・ジュリスト233号28頁/本多淳亮・季刊労働法42号44頁
判決理由  停年制とは、停年後も特別の事情により引き続き継続雇用する旨の規定又は慣行のない限り、一般には一定年令に達することにより劃一的に当然雇用関係終了の効果を生ずる制度であって、停年制の採用は企業経営者側の労務管理的意図に基く人事基準の設定行為と解されるが、それが労働者に不可避的に従業員たる地位の喪失を招来させる点で、労働者にとっては実質上意味するところは解雇と全く異ならないものであるから、解雇権の乱用が許されないのと同様、停年制についてもそれが停年制として社会通念上是認し得る合理的な理由を欠く場合には、かような制度を設けること自体、本来公共の福祉に適合して行使すべき企業経営権の範囲を逸脱し、権利の乱用として許されないものとして解するのが相当である。けだし、かように解しなければ、解雇に伴う紛議を停年制の採用によって回避し(停年制にかかる機能があることは被申請人自ら停年制を認める合理的理由の一つとして主張するところである)、実質上いかなる解雇をも可能ならしめる結果となり、かくては労働者に保障された生存権や労働権は全く有名無実に帰することともなるであろう。そして、一般に停年制と称せられているものは、それが職種別停年制であっても、その業種又は職種に要求される労働力の通常ないし平均的な適格性が低減するにもかかわらず、給与が高給となることや雇用の規模、態様等から、企業経営の合理化を理由として採用されておるのであり、それが企業の合理性の維推増進に寄与する意味から、社会的にその存在理由を是認できるのであって、かように企業の合理性の維持増進上これを採用する具体的必要性が存するものと社会観念上認められない限り停年制としてこれを是認し得る合理的理由を欠くものといわなければならない。