全 情 報

ID番号 00246
事件名 賃金支払請求事件
いわゆる事件名 沖縄米軍基地・全軍労事件
争点
事案概要  ハチマキ着用による就労ないし就労の申入れを拒否され、賃金カットされた組合員らがカット分の賃金の支払を請求した事例。(請求棄却)
参照法条 民法415条,536条2項
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 債務の本旨に従った労務の提供
賃金(民事) / 賃金請求権の発生 / リボン・ハチマキ等着用と賃金請求権
裁判年月日 1976年4月21日
裁判所名 那覇地
裁判形式 判決
事件番号 昭和49年 (ワ) 206 
裁判結果 棄却(控訴)
出典 労働民例集27巻2号228頁/時報821号151頁/タイムズ351号341頁/訟務月報22巻5号1162頁
審級関係 控訴審/00873/福岡高那覇支/昭53. 4.13/昭和51年(ネ)32号
評釈論文 山口浩一郎・ジュリスト647号148頁/木村五郎・昭和51年度重要判例解説〔ジュリスト642号〕222頁
判決理由  原告らのハチマキを着用しての就労行為は、いわゆるハチマキ斗争であり、その目的とするところは組合員相互の連帯意識の昂揚と団結の強化をはかるとともに、使用者に対して心理的圧迫を加え、他方、組合の要求を内外に訴えて大衆の支持を要請することにあるとはいえ、他面では組合員の提供する労務の内容には変りのないことからみると、右就労行為が使用者の正常な業務の運営を妨げるものでなく、また、職場の秩序を乱すものでないとすれば、使用者が右行為を違法として組合員に対して懲戒その他の不利益処分をなすことはできないと解すべきである。しかし、本件で問題となるところのハチマキ着用による就労行為が、雇用契約上の債務の本旨に従った履行または労務の提供といえるか否かの判断については、右行為はまさしく組合活動であり、組合活動は本来組合員の負担においてなすべきであるから、使用者の負担に便乗した本件ハチマキ着用による就労は、使用者がこれを容認する等の特段の事情のない限り、債務の本旨に従った履行または労務の提供があったということはできないと解すべきである。
 そうだとすると原告らは、在日米軍が、その権限に基づき本件ハチマキを取りはずして就労を命じたにもかかわらずこれに応ぜず本件ハチマキを着用して就労しようとしたり、また、就労したものであるから右就労は在日米軍の業務の正常な運営の妨げとなったか否か、またその職場の秩序が乱されたか否かを問わず雇用契約上債務の本旨に従った労務の提供、または、その履行があったとはいえないと判断するのが相当である。