全 情 報

ID番号 00253
事件名 賃金支払請求事件
いわゆる事件名 第一交通事件
争点
事案概要  腕章着用者に対し会社がなした就労拒否につき、右拒否は債務の受領拒否であるとして、賃金の支払を求めた事例。
参照法条 民法413条,536条
労働基準法24条1項
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 債務の本旨に従った労務の提供
賃金(民事) / 賃金請求権の発生 / リボン・ハチマキ等着用と賃金請求権
裁判年月日 1981年11月11日
裁判所名 大分地
裁判形式 判決
事件番号 昭和54年 (ワ) 532 
裁判結果 (控訴)
出典 労働判例381号59頁/労経速報1121号21頁
審級関係 控訴審/00877/福岡高/昭58. 7.28/昭和56年(ネ)695号
評釈論文 浅野博史・労働判例394号4頁
判決理由  腕章着用の持つ対内的、対外的意味であるが、対内的には、確かに原告らが誠実勤務義務を負う勤務時間中に組合活動を行うもので観念的に相容れない面のあることは否定できないが、前記腕章の形状、大きさ、色彩、文言からして実際上タクシー乗務に支障を来たすと解することは難しく、原告らの勤務体制が従業員と異なり、点呼も違った場所で行われていることからすると、原告らが被告会社の命令に従わず腕章を着用して就労したからと言ってただちに職場の秩序を乱したとも言えず、又、対外的には、タクシー運転手という接客業の意味を持つ職種であるからとすると、組合活動を嫌う一般乗客に対し不快感を抱かせ、ひいては、被告会社に対し悪感情を抱かせるおそれがないとはいえないが、右のような不快感、悪感情は法的にはさして考慮すべきではないと言うことができ、被告会社の営業上の損失についても、右腕章には「全自交」「大分地区自交労組」なる文言が記載されているのみで直接には被告会社に対する関係において争議中であることを示しているものではなく、被告会社の社会的信用を失墜させて、営業上の損失を与えたとするに至らない。
 以上の点を総合して判断すると、原告らの前記腕章を着用しての就労の申入れは、債務の本旨に従った労務の提供と認むべきである。