全 情 報

ID番号 00269
事件名 仮処分控訴事件
いわゆる事件名 花園病院事件
争点
事案概要  配転命令拒否、新職務就労拒否を指揮し、自らも右配転命令に基づく就労を拒否したことが、就業規則所定の懲戒解雇事由に該当するとして懲戒解雇された精神病院の組合執行委員長が、右解雇の効力停止を求めた仮処分申請事件の控訴審。(控訴認容、労働者敗訴)
参照法条 労働基準法2章,20条,89条1項9号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 業務命令拒否・違反
懲戒・懲戒解雇 / 懲戒手続
裁判年月日 1968年2月28日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 昭和41年 (ネ) 2358 
裁判結果
出典 労働民例集19巻1号218頁
審級関係 一審/甲府地/昭41. 9.13/昭和39年(ヨ)128号
評釈論文 川口実・法学研究〔慶応大学〕41巻9号99頁
判決理由  〔懲戒・懲戒解雇―懲戒事由―業務命令拒否・違反〕
 さきに認定した事実関係のもとにおいては、控訴病院の従業員として本件配置転換命令に服すべき被控訴人が控訴人側の再三の就労勧告にかかわらず新配置先の部署に就労せず、あえて旧職場に止ったのみならず、配置転換対象者たる組合員およびその他の組合員に働きかけて、新勤務を拒否して旧勤務時間割に従った就労をなさしめ、非組合員に対しては組合の本件配置転換命令拒否方針に対する協力方を説得し、これがため控訴病院の治療ならびに看護業務の遂行を阻害し、特に一部患者の病状に相当の悪影響を及ぼす結果を招いたことは前認定のとおりである。叙上のような組合の行動はとうてい労働組合の正当な活動と評価しえないものであり、かかる組合の行動を指揮推進し、かつ、自ら本件配置転換命令にもとづく就労を拒否した被控訴人の行為は不当であって、就業規則第五一条第一号、第五〇条第四号(「正当の理由なく上司に反抗したり命令を守ら」ず、その「行為の情状が特に重いとき」)、同条第一号、第四九条第六号(「職場の………秩序を乱し」、その「行為の情状が重いとき」)所定の懲戒解雇事由に該当するものとすべきである。
 〔懲戒・懲戒解雇―懲戒手続〕
 控訴病院就業規則第四八条は従業員の懲戒の種類、内容を列記し、同条第五号に「懲戒解雇、即日解雇する。但しこの場合行政官庁の認定を得る。」旨規定していることが明らかである。右第五号但書の規定はその措辞やや簡に失する嫌いがあるが、その趣旨とするところは、労働基準法第二〇条第一項但書、第三項の規定を承け、懲戒解雇をするときは予告をせず、また予告手当を支払わないが、解雇事由につき行政官庁の認定を受けなければならないことを確認的に規定したものであることが本件弁論の全趣旨によって認められる。ところで、右労働基準法の規定は、およそ懲戒解雇をする場合は解雇事由につき行政官庁の認定を受けるべきであり、これがない以上右解雇を無効とする法意であるとは解されないから、たとえ控訴人が被控訴人を懲戒解雇するに当り解雇事由につき行政官庁の認定を受けなかったとしても、その一事により本件解雇の意思表示を前記就業規則の規定に違反する無効なものとすることはできない。