全 情 報

ID番号 00342
事件名 雇用関係存続確認等請求事件
いわゆる事件名 岳南鉄道事件
争点
事案概要  出向先会社での上司の指示命令に従わない等勤務態度不良を理由に出向元会社により出勤停止処分に付された従業員が、その後も右態度が改まらず、また同僚を一方的に殺人未遂犯として告訴したりしたため、懲戒解雇されたのに対し、雇用関係の存在確認等求めた事例。(棄却)
参照法条 労働基準法2章,89条1項9号
民法625条
体系項目 配転・出向・転籍・派遣 / 出向中の労働関係
懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 業務命令拒否・違反
裁判年月日 1984年2月29日
裁判所名 静岡地沼津支
裁判形式 判決
事件番号 昭和52年 (ワ) 46 
裁判結果 棄却(控訴)
出典 労働民例集35巻1号23頁/労働判例436号70頁/労経速報1203号12頁
審級関係
評釈論文 山口浩一郎・労働経済判例速報1220号23頁/松田保彦・ジュリスト854号125頁
判決理由  〔配転・出向・転籍・派遣―出向中の労働関係〕
 右に判示した原告の怠慢な勤務態度及び上司の指示命令に従わなかった行為は、出向先であるA会社におけるものであって、出向元の被告が、出向先であるA会社に在職中の原告の右勤務態度に対し、被告の就業規則あるいは懲戒規程を適用して懲戒解雇を行いうるかどうかの点が一応問題となりうるので検討するに、(人証略)によれば、原告のA会社への出向は、いわゆる在籍出向であって、出向後も原告と被告との雇用関係は引き続き存続していることが認められ、こうした出向の場合、出向先での勤務態度は実質的には出向元である被告における勤務態度と同視して評価することが可能であると考えられるから、被告が原告の前記のような出向先での勤務怠慢、上司の指示命令違反行為について、被告の懲戒規程を適用し、出向命令を解除したうえで懲戒解雇を行うことは許されるというべきである。
 〔懲戒・懲戒解雇―懲戒事由―業務命令拒否・違反〕
 右事実によれば、原告は、B課長らの芝刈り作業を行うべき旨の指示命令を拒否する正当な理由がないにもかかわらず、A会社における自己の業務は機械の保守管理であると主張して、かたくななまでに機械の整備、補修にこだわって同課長らの指示命令した作業を拒否し、しかも、実際にはほとんど機械整備の仕事もないのに機械置場あるいはその周辺をぶらぶらするといった勤務態度を取り続けていたというほかはなく、原告のA会社におけるこうした態度は、出向を命じられた従業員の出向先での勤務態度として極めて怠慢であったといわざるを得ないばかりでなく、出向先の上司の指示命令を無視してその職場秩序を乱すに足りるものであったということができる。
 (中 略)
 以上検討したところに従って判断すると、原告は、右ロープ切断事故が同作業員の殺人未遂事件であることを肯認しうる十分な根拠の存在しない段階で一方的に殺人未遂行為と邪推し、告訴を行ったものと評価せざるを得ない。
 (中 略)
 右事実によれば、原告の行ったビラの配布行為は、原告の主張するような自己の生命、身体を守るためにやむを得ず行った行為と評価することはできず、被告の名誉を不当に侵害する行為であったというべきである。
 (中 略)
 被告は、前記1ないし3に認定したとおり、原告に懲戒解雇理由があるとして本件懲戒解雇を行ったが、右解雇を行うにあたっては、右規程の定めるところに従い、昭和五一年一二月二九日、行賞懲戒委員会を開催し、懲戒解雇が相当である旨の委員全員の賛成の答申を得て、懲戒解雇の決定を行ったことが認められ、右事実によれば、本件懲戒解雇の手続も適法になされたものと認められる。
 (中 略)
 以上によれば、本件懲戒解雇は、被告の懲戒解雇事由に該当する原告の行為を基にしてなされたものであるし、また、被告が懲戒権の行使として行いうる合理的な範囲のものであって無効ということもできない。したがって、原告と被告との間の雇用関係は本件懲戒解雇により終了したことが明らかである。