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ID番号 00377
事件名 労働契約存在確認等請求控訴事件
いわゆる事件名 東芝柳町工場事件
争点
事案概要  二ケ月の期間雇用をそれぞれ一年から三年八ケ月にわたり反復されていた臨時工らが、契約更新を拒否されたのに対し、右拒否は実質的な解雇に当り、しかも理由のない解雇として無効であるとして労働契約の存在確認等求めた事件の控訴審。(控訴棄却、原判決一部変更、労働者一名除き勝訴)
参照法条 民法626条
労働基準法20条,21条
体系項目 解雇(民事) / 短期労働契約の更新拒否(雇止め)
裁判年月日 1970年9月30日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 昭和43年 (ネ) 1844 
昭和43年 (ネ) 1891 
裁判結果 棄却 一部変更(上告)
出典 時報606号3頁
審級関係 上告審/00385/最高一小/昭49. 7.22/昭和45年(オ)1175号
評釈論文 凪崎二郎・労働判例百選<第三版>〔別冊ジュリスト45号〕78頁/阿久沢亀夫・判例評論144号33頁/横井芳弘・昭45重判解説188頁/門田信男・労働法の判例〔ジュリスト増刊〕83頁
判決理由  以上1、2認定にかかる事実関係からすると、原告らと会社との間の本件労働契約においては、契約期間を二か月と定めた契約書が取かわされてはいても、右期間満了時に右契約が終了すべきことは必ずしも当事者双方とも予期するところでなく、むしろ、会社としては景気変動等の原因による労働力の過剰状態を生じない限り契約の継続することを期待し、原告らとしても勿論引続き雇傭されることを期待していたものであって、実質においては当事者双方とも、期間の定めは一応あるが、いずれかから格別の意思表示がなければ当然更新せらるべき労働契約を締結する意思であったものと解することが相当と認められる。(臨時工に適用せらるべき成立に争いない乙第八号証の六の(イ)の臨時従業員就業規則中解雇の規定が設けられ、その解雇原因のうちに雇傭期間の満了が挙げられていることからしても十分推断できることである。)
 そうだとすると本件各労働契約は、契約当初及びその後しばしば形式的に取交された契約書に記載された二か月の期間の満了する毎に終了することはなく、当然更新を重ねて、恰も期間の定なき契約と実質的に異らない状態で存続していたものといわなければならない。
 (中 略)
 会社はこのような契約関係にある原告ら基幹臨時工に対して適用すべき臨時従業員、就業規則(以下臨就規と称する。)を定めており、これにもとづき原告らに対しそれぞれ将来労働契約を継続せしめず契約を終了させる趣旨の下に本件傭止めの意思を表示したこと前示のとおりであるから、これは実質上臨就規にいわゆる解雇の意思表示にあたるものと認めざるを得ない。
 (臨就規の解雇基準)《証拠略》によれば、臨時工に適用すべき臨就規には、原判決別紙記載の解雇事由が定められていて、このような場合解雇事由はこれに限定され、会社はこれに該当しなければ解雇しない趣旨に自ら解雇権を制限したものであるとみるべく、また理論上、右事由に形式的に該当するときでも、それを行使すること著しく苛酷にわたる等相当でないときは会社は解雇権を行使し得ないと解するのが相当である。