全 情 報

ID番号 00380
事件名 地位保全仮処分申請
いわゆる事件名 光文社事件
争点
事案概要  書籍の編集、出版、販売を業とする会社で補助的業務に従事する、六ケ月の期間の定めのある雇用契約で雇用されていた臨時雇員らが、契約の更新を拒絶されたので、従業員としての地位保全の仮処分を申請した事例。(申請一部認容、一部却下)
参照法条 労働基準法21条,20条
民法629条,628条,1条3項
体系項目 解雇(民事) / 解雇予告と除外認定
解雇(民事) / 短期労働契約の更新拒否(雇止め)
裁判年月日 1972年4月4日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和45年 (ヨ) 2408 
裁判結果 一部認容、一部却下
出典 労働判例151号38頁
審級関係
評釈論文
判決理由  〔解雇―解雇予告と除外認定〕
 民法第六二八条は、期間の定めのある雇用契約においても、使用者は、やむことを得ざる事由のあるときは、雇用契約を即時解除することができることを規定している。一方、労働基準法第二〇条第一項但書は、使用者は、天災事変その他やむを得ない事由のため事業の継続が不可能となった場合には、雇用契約を即時解除することができることを規定している。ところで、右労働基準法の規定を期間の定めのない雇用契約についてだけ適用のある規定と解するときは、期間の定めのある雇用契約は、単に使用者側にやむを得ない事由があれば即時解除ができるのに反し、期間の定めのない雇用契約は、かえって使用者側にやむことをえない事由だけのある場合は解除できず、これがため事業の継続が不可能となった場合に初めて解除できることになる。このような解釈は、両者間に著しい均衡を失する結果をもたらし、ひいては労働基準法の右規定が解雇の要件を厳格にしぼった趣旨を没却することになる。これによってみれば、右規定は、民法第六二八条の規定を排斥したものであって、期間の定めのある雇用契約においても、天災事変その他やむをえない事由のため事業の継続が不可能になった場合でなければ、使用者は雇用契約の即時解除ができないものと解せられるのである。そしてこの規定は、労働者保護のため設けられた強行規定であるから、これに反する労働者に不利な約定は無効である。
 申請人らと被申請人間の前記解除約款が、その文言どおりに解されるならば、これは右規定に違反し無効であるから、被申請人はこれによって申請人らを解雇できない。また右規定を労働基準法の右規定と同趣旨に解し有効だとしても、被申請人に申請人らを解雇しなければ、事業の継続が不可能になったことの疎明はない。
 〔解雇―短期労働契約の更新拒否(雇止め)〕
 以上1ないし4に認定した事実によれば、被申請人会社は、臨時雇員の雇用期間を一応六カ月と約したが、その契約の更新を拒絶する合理的な必要性のない限り、契約の更新拒絶をすることがなく、自動的に契約が更新されるままに任せられてきたことが認められるのである。このような事情の下においては、合理的な必要性もないのに契約の更新を拒絶することは、被申請人の利益にならないのに、申請人らの職を奪い、これに苦痛だけを与えることになるから、権利の濫用として許されないものと解するのが相当である。
 ところで、先に説示したとおり、被申請人の本件更新拒絶には、会社の経営上からする合理的必要性が全くないのであるから、これは「業務の都合」に藉口して、申請人らから職を奪い、申請人らに苦痛を与える以外の何物でもないと解されるから、本件更新拒絶は、権利の濫用として無効である。
 (中 略)
 以上のとおり、本件更新拒絶は無効であるから、申請人らと被申請人間の雇用契約が昭和四五年九月三〇日に満了するについて、被申請人から更新について異議がなかったことになる。そして申請人らが契約の更新について異議がないことは弁論の全趣旨によって認められるから、右雇用契約は同日期間満了によっては終了しなかったのである。かえって、前記自動更新の合意によって被申請人と申請人らとの間の雇用契約は、昭和四五年一〇月一日以降も継続していることになる。