全 情 報

ID番号 00387
事件名 従業員地位保全等仮処分申請事件
いわゆる事件名 フジカラーサービス事件
争点
事案概要  三年近くにわたって短期(二~一〇ケ月)の雇用契約を反復継続してきた学生アルバイトを解雇(雇止め)した会社に対して、労働契約上の仮の地位の保全が求められた事例。(申請却下)
参照法条 労働基準法21条
民法629条
体系項目 解雇(民事) / 短期労働契約の更新拒否(雇止め)
解雇(民事) / 整理解雇 / 整理解雇の要件
裁判年月日 1977年11月28日
裁判所名 東京地八王子支
裁判形式 判決
事件番号 昭和52年 (ヨ) 321 
裁判結果 却下
出典 労働判例289号56頁/労経速報970号18頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇―整理解雇―整理解雇の要件〕
 2 ところで、債権者に対する本件解雇は、余剰人員の整理を目的とするいわゆる整理解雇に該るが、一般に整理解雇は被傭者の責に帰すべからざる事由によって一方的にその地位を奪うものであるから、解雇権の行使に際しては特に慎重であることが要求され、企業の経営状況等に照らし人員整理の必要性が客観的に認められる場合でなければならないとともに、対象者の選択にも合理的理由の存在することが必要と解すべきである。
 そこで、このような見地に立って考えるに、右認定の事実関係によれば、債務者は、昭和四八年のいわゆる石油ショックによる経済不況や業界における過当競争の影響により同年以降業績が悪化し、かつ、数年にわたる業績悪化の状況から推して、近い将来業績が好転する見通しもないため、その対策として物件費および人件費を切詰めるなどする一方、新規採用の中止により人的構成の減縮を図るなどの施策を講じたが、原価中の人件費の占める割合が非常に高い業種のゆえに、従業員の自然減による合理化には自ら限界があり、業績の悪化に対する抜本的な対策としては、余剰人員の整理しかなかったことが認められる。よって、債務者の人員整理には客観的にみて相当な必要性があったものといわなければならない。
 次に、整理の方策として、債務者は、固定要員に対しては、退職者の不補充と新規採用中止による自然減を図ることと配転をしたにとどまり、人員整理の対象を変動要員だけに求め、パートタイマーなどの典型的な変動要員はもとより、長期アルバイト学生をもすべて整理する方針で臨んだのであるが、すでに述べたとおり、債権者の雇傭関係は、債務者との間で形式的に定められた契約期間に拘束されるものではないとはいえ、アルバイトの被傭資格が学生であることを要する以上、その終期が数年のうちに到来することは当初から予定されており(ちなみに、債権者は来春卒業が予定されている。)、アルバイト学生が卒業後債務者の正規従業員に登用される制度ないし慣行の存在したことを認めるに足りる疎明も全くないのであるから、正規従業員と比較すると、債務者との結びつきが希薄であることは否めない。そうだとすれば、債務者が、固定要員には人員整理の手をつけず、債権者を他の変動要員とともに整理の対象としたことには、それ相当の合理的な理由があるものというべきである。
 (中 略)
 5 以上のとおり、本件解雇は有効であり、債権者の雇傭契約関係はこれにより終了したものといわなければならない。
〔解雇―短期労働契約の更新拒否(雇止め)〕
 債権者は、昭和四九年四月一三日、契約期間を二か月とする労働契約を債務者と締結し、以来契約の更新を重ねてきたアルバイト学生であるが、その雇傭関係は、債務者の変動要員中の大半を占める、季節的受注の変動によって採用される典型的な変動要員とは明らかに異なっており、被傭資格が学生に限定されていることから、自ずと雇傭期間の終期は定まってはいるものの、その限りにおいて相当長期間の継続性が認められるばかりでなく、その間における更新手続は、単に形式を整えるためのものに過ぎず、契約書記載の契約期間は一応のものであって、その満了により契約が終了するとは当事者双方とも予期していなかったことが認められる。のみならず、債権者の従事する仕事の種類、内容は正規の従業員のそれと大差がなく、その他、従来債権者と同じ雇傭形態のアルバイト学生が契約期間の満了によって傭止めされた実例がないなどの諸事情を考慮すると、本件雇傭契約は、これを実質的に見れば、右被傭資格の喪失を終期とする契約であり、それ以前に債務者がした前記雇傭打切りの意思表示は、法律上解雇の意思表示と解するのが相当である。