全 情 報

ID番号 00392
事件名 地位保全仮処分申請控訴事件
いわゆる事件名 三和銀行事件
争点
事案概要  銀行にパートタイマーとして雇用された者が期間満了を理由とする雇用契約終了の通告に対して地位保全等を求めて争った事例。(労働者敗訴、控訴棄却)
参照法条 民法1条3項,627条
労働基準法21条
体系項目 解雇(民事) / 解雇権の濫用
解雇(民事) / 短期労働契約の更新拒否(雇止め)
裁判年月日 1979年2月27日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 昭和47年 (ネ) 3029 
裁判結果 棄却(確定)
出典 労働民例集30巻1号120頁/時報927号238頁/東高民時報30巻2号27頁/タイムズ386号119頁/労働判例315号42頁/労経速報1012号3頁
審級関係 一審/東京地/昭47.12. 8/昭和45年(ヨ)2221号
評釈論文 平田秀光・労働判例324号12頁
判決理由  〔解雇―解雇権の濫用〕
 以上認定の諸事実を総合考較すれば、本件解雇の主たる理由は、為替事務の正確な処理と能率の向上を図るため、パートタイマーの使用を廃止し、正行員をもってそれに当てんとする被控訴銀行の新たな事務運営方針が確立されたことにあるものというべきであるが、かかる方針それ自体は、一時的ないしは臨時的な仕事についてはともかく、少なくとも、為替事務のごとく社会的信用を第一とする銀行の経常的事務のあり方からみて、また、対行員との関係ないしは労働者保護という労働法の基本的理念に照らしても、首肯し得るに足りるものというべきである。しかも、控訴人は、右の新たな事務運営方針が確立されたということだけの理由で解雇されたわけではなく、為替係におけるパートタイマーの平均勤務時間が四、二五か月(京橋支店におけるパートタイマー全体のそれが四、〇か月)であることからみて、控訴人は、稟議期間の満了する昭和四四年一〇月三一日現在で、京橋支店におけるパートタイマーの平均勤務時間の約二、四倍勤務したことになること、また、控訴人の勤務状況が一般正行員のそれに比較した場合決して良好であるとはいえなかったのであるから、仮りに、採用に際し、控訴人が相当長期の継続雇用を期待したとしても、前叙のごとくかかる期待には客観的合理性の認められない以上、控訴人が現実に被控訴銀行におけるパートタイマー制度の実態のすべてを知悉していたと否とにかかわらず、被控訴銀行が稟議期間の満了に際し期間延長ないしは再雇用等特別の措置をとることなく解雇の挙に出たからといって、本件解雇を目して、相当の事由を欠き、解雇権の濫用にわたるものと論難することは、当を得ないというべきである。
 〔解雇―短期労働契約の更新拒否(雇止め)〕
 いわゆるパートタイマーであっても、一時的ないしは臨時的な仕事に従事したり、雇用契約終了の時期を確定的に取り決めているような場合はともかく、控訴人のごとく、雇用期間の定めがなく、しかも、正行員と種類、内容の点で異なるところのない仕事に従事している者については、《証拠略》によって一応認められる次のような事情、すなわち、被控訴銀行にあってはいわゆる稟議期間が満了しても解雇された事例はなく、従来のパートタイマーのすべての者が自己の発意によって退職しており、また、長期継続雇用や正行員への登用の例も絶無ではないという事情の下においては、雇用の継続を期待することも無理ではないと考えられるので、雇用契約は、いわゆる稟議期間の満了によって当然に失効するものではなく、また、本件に現われた全疎明資料によっても、被控訴銀行においてかかる慣習があったことを認めるに足りない。それ故、被控訴銀行が控訴人に対してした雇用契約終了の通告は、解雇の意思表示に該当するものと解すべきである。
 パートタイマーとの雇用契約であっても、単に期間の定めがないということだけで、民法の一般原則に従って何時でも無条件に解雇し得るものではなく、現下の社会経済情勢の下では解雇により労働者の生活が危殆に陥ることはみやすいところであるということから、客観的に首肯し得る相当の事由がなければ解雇することは許されず、相当の事由のない解雇は、いわゆる解雇権の濫用としてその効力を否定すべきものと解するのが妥当である。もっとも、かようにパートタイマーとの雇用契約を解約するについても相当の事由の存することが必要であるといっても、前叙のごとき実態を有するパートタイマーと、終身雇用的観念の下に採用され、就業規則所定の解雇事由がない限り原則として満五五歳まで身分の保障されている(この点は、《証拠略》によって疎明される。)正行員の場合とでは、必要とする相当性の度合につき、同日に論ずることはできず、その間に軽重の差のあることはいうまでもない。