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ID番号 00481
事件名 免職処分無効確認事件
いわゆる事件名 国鉄レッド・パージ事件
争点
事案概要  定員法に基づき免職処分に付された国鉄職員らが、右免職処分は思想、信条による差別待遇にあたり無効である等として、処分後九年余を経て処分の無効確認を求めた事例。(請求却下)
参照法条 日本国有鉄道法29条
民法1条2項
体系項目 労基法の基本原則(民事) / 労働者 / 公企(本職員)・地方公営企業の職員
解雇(民事) / 解雇の承認・失効
裁判年月日 1970年6月30日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和34年 (行) 28 
裁判結果 (控訴)
出典 時報606号92頁/タイムズ251号237頁
審級関係 控訴審/東京高/昭49. 4.26/昭和45年(行コ)50号
評釈論文
判決理由  〔労基法の基本原則―労働者―公企(本職員)・地方公営企業の職員〕
 おもうに、日本国有鉄道(以下単に国鉄という。)とその職員との勤務関係は、私企業とその労働者との勤務関係と本質的には同様の性質をもち労働契約にもとづくものであり、ただその労働関係については公労法の、その分限、懲戒等については国鉄法の各適用を受ける点で特殊性を有するにすぎないと考えられる。従って、国鉄職員に対する免職等の不利益処分は、これを抗告訴訟によって争わせる旨の実定法の定めのない限り、同様な法関係は同様な法原則に服せしめるという一般原則からいって、私企業の労働者に対する解雇についてと同様民事訴訟によって争わせるのが法の趣旨であると解するのが相当であるところ、(中 略)。
 実定法上、国鉄職員に対する国鉄法二九条による免職処分については、例えば国家公務員や地方公務員に対する不利益処分の場合(国家公務員法九二条の二、地方公務員法五一条の二参照)とは異なり、これを抗告訴訟によって争わせる趣旨の規定はないから、これを抗告訴訟の対象となる「処分」と解することは困難である。
 (中 略)
 そうすると、国鉄法二九条にもとづく右免職が「処分」であることを前提としてその無効確認を求める原告X1の訴えは、その余の点について判断するまでもなく不適法といわざるをえない。
 〔解雇―解雇の承認・失効〕
 おもうに、定員法にもとづく免職が「処分」とされる理由の一つは、これについて早期に不可争力を生じさせ法律関係の安定を図ろうとするところにあると考えられるのみならず、そもそも労使の法律関係というものはこれを早期に安定させる必要が存在するのである(労働組合法二七条二項、公労法二五条の五第四項、労働基準法一一五条参照)。しかも、本件のように免職処分を受けた者が異議をとどめず退職金等を受領し、その後長期にわたって右処分の効力を争わないときは、企業側において、労働関係が消滅したものと信じてその上に新たな企業組織を形成し、企業活動を展開してきたとしても、もっともなことであるから、そのような場合に免職処分を受けたものが長期間を経てから突如その無効を主張して訴えを提起することは、労働関係上の権利の行使としてはもとより訴権の行使としてもあまりにもし意的であり、信義にもとる行為であるといわなければならない。
 そうであるとすれば、原告X2らの本件訴えは、前示のような事実関係に照らし考えるとき、信義則に反する訴権の行使として不適法とみるのが相当である。