全 情 報

ID番号 00497
事件名 解雇無効確認請求事件
いわゆる事件名 日立製作所事件
争点
事案概要  病気を理由とする解雇につき、業務上の負傷であって労働基準法一九条違反が主張されたのに対し、業務上の負傷と業務外の疾病とが混合併存しており、前者が治癒したとみられると判断して、解雇無効確認請求を棄却した事例。
参照法条 労働基準法19条
体系項目 解雇(民事) / 解雇制限(労基法19条) / 解雇制限と業務上・外
裁判年月日 1953年11月11日
裁判所名 水戸地
裁判形式 判決
事件番号 昭和26年 (ワ) 86 
裁判結果
出典 労働民例集4巻6号589頁
審級関係
評釈論文
判決理由  労働基準法第十九条において労働者が業務上負傷し又は疾病にかかつた場合其の療養のための休業期間並に其の後三十日の回復期間に限つて使用者に対し解雇を禁止しているのはもとより右の如き業務上負傷し又は疾病にかかつた労働者を保護するためではあるが、本件のように業務上の負傷に因る疼痛と之と直接関連のない私病に起因する疼痛とが医学的に区別し得られないため右両者が併存混同しているものと認めるの外ないような場合には業務上の負傷のみに因る疼痛が通常医学的に見て治癒する相当の期間を経過したときは、右業務上の負傷は其の時に治癒したものと認めるを相当とするところ、前記各鑑定人の鑑定の結果並に鑑定証人Aの証言に徴すると、原告の本件負傷の程度では医学的に見て二週間位で治癒するのを普通とするが其の治療方法の如何によつては治癒するまでに二、三ケ月を要することもあることが認められるので、これ等を参酌して考えれば、原告の本件業務上の負傷は遅くも受傷後三ケ月を経過した昭和二十五年八月十一日頃には既に治癒し、其の後の疼痛は本件業務上の負傷と関連のない原告の前示私病に因るものと認定するのが相当である。
 然らば被告会社が其の後三十日の回復期間を経過した同年九月二十日附を以て原告に対し為した本件解雇の意思表示は労働基準法第十九条に違反していないわけであるから、右違反を理由として被告会社に対し該解雇の意思表示の無効確認を求める原告の予備的請求も亦失当と謂わなければならない。