全 情 報

ID番号 00498
事件名 仮処分申請事件
いわゆる事件名 小倉炭鉱事件
争点
事案概要  業務上傷病による休業中になされた懲戒解雇の意思表示につき、労働基準法一九条一項違反で無効と主張されたのに対し、解雇予告はなしうるとして、休業後三〇日を経過した時点で懲戒解雇の効果を生ぜしめ、効力停止の仮処分申請を却下した事例。
参照法条 労働基準法19条
体系項目 解雇(民事) / 解雇制限(労基法19条) / 制限期間中の解雇予告
裁判年月日 1956年9月13日
裁判所名 福岡地小倉支
裁判形式 判決
事件番号 昭和30年 (ヨ) 245 
裁判結果
出典 労働民例集7巻6号1048頁
審級関係
評釈論文 労働判例百選〔ジュリスト252号の2〕95頁
判決理由  労働基準法第十九条の解雇制限の中に労働者の責に帰すべき事由に基いてなす懲戒解雇を含むか否かは問題であるが、同条が雇傭関係より生ずる業務上の負傷、又は疾病にかかった労働者、並びに産前産後という特別の事情にある女子労働者を保護する為に特に設けられている事、等よりして同法第十九条の解雇制限の中には労働者の責に帰すべき事由に基いてなす懲戒解雇をも含むものと解すべきであるから同条の規定する解雇制限期間内に於ては懲戒解雇をなすことも許されないのである。
 従って被申請人が申請人に対し昭和三十年四月七日に同日をもって即時解雇する旨の懲戒解雇の意思表示は不適法でその効力を生じないものというべきである。然し乍ら同法第十九条は同条の規定する条件の下にある要保護労働者の為に特にその労働者の地位を一定の期間内確保するのが目的であるから、解雇制限期間内と雖も解雇制限期間の満了を条件とし或は解雇制限期間が確定している場合はその確定した期間を期限として、解雇の事由に応じそれぞれの要件を充たして予め解雇する旨の意志表示をなすことは許されるものであり、予告期間を定めず、予告手当も支払わないでなす懲戒解雇の如きは、むしろ解雇制限期間内に解雇制限期間の満了を条件とし或は期限として予め之をなすことが要保護労働者の為には適当であるとさえ考えられる。
 ところで本件懲戒解雇の意志表示は前記認定の様に偶々被申請人に於て申請人が業務上負傷した為の解雇制限期間内であることを知らなかったため、被申請人は其の期間内である昭和三十年四月七日になしたものであるが、右意思表示は申請人の非行により被申請人と申請人との雇傭契約を出来るだけ早く解除しようとするもので、右意思表示の時にその効果を生じないものであれば之をなさないというのではなく、若し解雇制限期間内として其の効力を生じない際は右制限の満了と同時に解雇する旨の意思をもってなされたものであることは弁論の全趣旨に徴し之をうかがうことが出来る。
 そうすると申請人が業務上の負傷により昭和三十年三月十九日まで療養のため休業していた事は当事者間に争がないので、其の後三十日間即ち昭和三十年四月十八日を経過した同月十九日に本件雇傭契約は懲戒解雇により解除されたものといわざるを得ない。