全 情 報

ID番号 00511
事件名 仮処分異議事件
いわゆる事件名 中山鋼業事件
争点
事案概要  使用者の賃金引下げ宣言に対抗してストライキを行なった労働者に対する集団的解雇について被解雇者が行なった仮処分の異議事件。(解雇の意思表示の効力を停止する仮処分の必要性を否定しながらも、賃金支払については肯定した)
参照法条 労働基準法20条
民法536条2項
体系項目 賃金(民事) / 賃金請求権の発生 / バックペイと中間収入の控除
解雇(民事) / 労基法20条違反の解雇の効力
解雇(民事) / 解雇の意思表示の撤回
裁判年月日 1952年12月25日
裁判所名 横浜地
裁判形式 判決
事件番号 昭和27年 (モ) 714 
裁判結果
出典 労働民例集3巻6号564頁
審級関係
評釈論文
判決理由  〔賃金―賃金請求権の発生―バックペイと中間収入の控除〕
 本件弁論の全趣旨によれば、昭和二七年七月分以降の選定者等の賃金については会社との間で紛争中でいまだ解決していないことが認められるけれども、選定者等が支払いを求めている金額は証人Aの証言と、同証言によって真正に成立したと認められる甲第三一号証の記載によれば選定者等が被申請人から昭和二七年四、五、六月分の賃金として受けた金額の平均額であることが認められるので、特に反証のない本件に於ては昭和二七年七月一日以降の被申請人の選定者等に支払うべき賃金は一応これによるのが妥当と考える。
〔解雇―労基法二〇条違反の解雇の効力〕
 被申請人は同人の解雇に当って労働基準法第二〇条に定める予告手当の支払を提供していないし、成立に争いのない乙第二号証の一九によれば六月三〇日附の解雇を固執していると認められ右解雇の日以後予告期間の経過を以て有効とする効力を生ずる趣旨にとるのは相当でないので、同人に対する解雇もまた無効である。
 〔解雇―解雇の意思表示の撤回〕
 被申請人が選定者等に対し申請人が主張するような解雇の意思表示をしたこと、ならびに被申請人が一〇月八日附で被解雇者たる選定者の全員に対し解雇を取消す旨の通知をしたことは当事者間に争いのないところである。選定者等が被申請人の解雇の効力を否定して抗争している時、被申請人がその解雇の意思表示を取消す(撤回)ときは、元の解雇の意思表示の有効無効の点は別問題としてその取消以後は従業員たる地位を認めたことに外ならない。尤も被申請人は解雇の意思表示取消の後においても選定者等に対し就業を拒み、賃金支払の義務を否定していることは争いのない事実であるが、そのことと従業員たる地位を認めることとは必しも矛盾する訳ではないから、これある故に右解雇の意思表示の取消にも拘らず従業員たる地位をも否認しているということにはならない。それ故この点については仮処分の必要がないことに帰する。