全 情 報

ID番号 00521
事件名 雇用契約存在確認請求事件
いわゆる事件名 駐留軍池子火薬廠田奈支廠事件
争点
事案概要  労働者の安全規則違反の行為が労働基準法二〇条但書の「労働者の責に帰すべき場合」にあたるとしてなされた即時解雇につき、右場合にあたらないと判断し、予告手当の支払いのない即時解雇の意思表示を無効とした例。
参照法条 労働基準法20条1項
体系項目 解雇(民事) / 解雇予告と除外認定 / 労働者の責に帰すべき事由
解雇(民事) / 労基法20条違反の解雇の効力
裁判年月日 1956年11月21日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和30年 (ワ) 1397 
裁判結果
出典 労働民例集7巻6号1054頁/時報99号21頁/訟務月報3巻1号46頁
審級関係
評釈論文
判決理由  〔解雇―解雇予告と除外認定―労働者の責に帰すべき事由〕
 第一、原告は昭和二十六年五月三十日駐留軍労務者として被告に期間の定めなく雇用され、爾来横浜市港北区(略)所在米国駐留軍池子火薬廠田奈支廠に爆薬取扱工として勤務していたが昭和二十九年三月(日は争いがあるので後に判断する)被告から次の理由によって即時解雇の意思表示を受けた、即ち原告は、(一)昭和二十九年二月二十三日午前十一時頃前記田奈支廠内東レールヘツド附近において後進しつつあったトラツクの後部ドア(テールゲート)を開け、そのため後部ドアを開けるのにトラツクが停止している場合に要する時間の約二倍の時間を費し、かつ原告の生命を危殆ならしめた、右は甚しく常識外れである。(二)同日午後三時頃同所附近において時速五哩で動いていた貨車の側壁に飛び乗り右貨車の戸を開け、そのため原告の生命を危殆ならしめ、かつ右貨車に積まれてあった四十ポンド爆薬(シエープチヤージ)二箱を地上に落下させ爆発の危険を惹き起した。右は安全規則違反である。
 (中 略)
 以上認定の原告の行為、田奈支廠における指遵監督並びに作業実施の実情を考え合わせると、前記原告の非難すべき行動は故意に職場の規律慣行に違反したものではなく、情状軽い注意義務違反に過ぎないものというべきであるので、この程度のものをもつて基準法第二十条第一項但書にいう労務者の責に帰すべき事由に該当するものと断ずるに足りない。そして右規定は強行規定であるから、これに違反する本件解雇の意思表示は無効である。
 〔解雇―労基法二〇条違反の解雇の効力〕
 三、次に被告は、仮りに本件解雇が労務者の「責に帰すべき事由」に該当しないとすれば、予告手当を支払う義務を負うに止まり、その不提供によって解雇自体が無効となるものではないと主張する。しかしながら、同条第一項但書の意思表示が同項本文後段の意思表示を含むものとしても予告手当の提供は同項本文後段の即時解雇の意思表示の効力発生要件と解すべきであるから右主張は失当である。