全 情 報

ID番号 00523
事件名 損害賠償請求事件
いわゆる事件名 間組事件
争点
事案概要  工事現場で暴行事件があり、使用者には懲戒解雇の意向もあつたが、その労働者の将来を考えて自発的に退職するよう説得した結果、彼が退職願を提出したばあい、労基法二〇条の適用があるか否かが争われた事例。(消極)
参照法条 労働基準法20条
民法627条
体系項目 解雇(民事) / 解雇予告 / 合意解約と解雇予告
退職 / 合意解約
裁判年月日 1958年8月13日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和33年 (ワ) 1507 
裁判結果
出典 新聞112号11頁
審級関係
評釈論文
判決理由  二、成立に争ない乙第一号証と証人A、同Bの各証言を綜合すれば、(イ)昭和三〇年九月頃原告が自動三輪車の運転免許証を有しているというので、被告会社から訴外C株式会社に派遣されて、同社の自動三輪車の運転の仕事をしていたところ、同年一〇月初め頃同社に正規の自動車運転手が来たので、原告は被告会社の職場にもどって働くこととされたが、原告は自分の働く現場をたびたび変えられるのは困るとして、被告会社にもどることを拒否し、これを説得に来た被告の職員Bの右ほほをなぐり、同人のくちびるを切る暴行をしたこと(ロ)被告会社側に原告の右行為を理由として就業規則により原告を懲戒解雇にする意向もあったが、原告の属する班の副作業長をしていたAは、原告のような青年が懲戒解雇にされると将来の就職にも支障を来して気の毒であると考えて、自発的に退職するよう原告を説得したので原告も退職の申出をすることにきめ、同月六日被告会社に退職願を提出し、被告もこの退職の申出を承諾したこと、なおAはその際原告の就職先をも世話したことが認められ、右認定に反する原告本人尋問の結果は信用できないし、他に右認定を覆すに足る証拠はない。
 三、労働基準法第二〇条は、使用者側よりする解雇に当っての制限であって、本件のように労働者側から申し出る退職については適用がないから、被告が原告を解雇したことのない以上、被告が解雇の予告をしたり又は予告手当を提供すべき義務はないといわなければならない。なお原告は、右退職申出は、被告が予告手当を支払うこと、原告に就職口を世話することを条件としてなしたものであると主張し、これにそうかのような原告本人の供述部分もあるが、右供述は信用できないし、他に右事実を認めるに足りる証拠はない。
 四、以上のとおり、被告は原告を解雇したわけでもなくその他原被告間の雇用関係が終了するについて被告の不法な行為があったと認めるに足りる事情もないから、被告の不法な解雇により原被告間の雇用関係が消滅し、そのため原告が損害をこうむったとする原告の本訴請求は理由がない。