全 情 報

ID番号 00586
事件名 仮処分申請事件
いわゆる事件名 日本製鋼所事件
争点
事案概要  広島製作所営業課販売係に勤務していた者が福岡営業所へ転勤命令を受け、右転勤命令を拒否したことにより懲戒解雇されたため、地位保全の仮処分を申請した事例。申請人は、右解雇を組合活動のゆえの不当労働行為と主張した。(申請却下)
参照法条 労働基準法20条1項,89条1項9号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 業務命令拒否・違反
解雇(民事) / 解雇予告と除外認定 / 労働者の責に帰すべき事由
裁判年月日 1955年5月10日
裁判所名 広島地
裁判形式 判決
事件番号 昭和29年 (ヨ) 640 
裁判結果
出典 労働民例集6巻3号290頁
審級関係
評釈論文
判決理由  〔解雇―解雇予告と除外認定―労働者の責に帰すべき事由〕
 しかして右懲戒解雇は転勤拒否という労働者たる申請人の責に帰すべき事由に基いて解雇したものであるから、被申請人は申請人に対し労働基準法第二十条第一項本文の予告手当を支払う必要もないから申請人の一ケ月の解雇予告手当の支給手続もしていないため本件解雇は無効であるとの主張も採るを得ない。
 〔懲戒・懲戒解雇―懲戒事由―業務命令拒否・違反〕
 更に申請人は仮に右転勤命令が有効であり申請人が右命令の効果として福岡営業所の従業員となったとしても同営業所就業規則には懲戒に関する規定を欠いているから被申請人は懲戒解雇をなす権利を有しない旨抗争するけれども元来使用者は解雇権の濫用にわたらない限り従業員を解雇し得るを原則とすること前示のとおりであるからこの申請人の主張も亦採用し難い。
 使用者が一般的に懲戒権という権利を有するかどうかの問題は暫くこれを措き少くも使用者は権利濫用にわたらない限り従業員を解雇する権利を一般的に有するものであるが(尤も労働法、就業規則、労働協約等に特別の定めがある場合はこれに従うべきは勿論である)従業員を懲戒の目的で解雇すること即ち懲戒解雇が権利濫用に属するかというのに業務の運営と秩序を維持するため必要に迫られて懲戒の目的を以て解雇する場合には解雇権の濫用とはならないと解すべきである。而して前記認めた如く申請人は使用者たる被申請人の業務運営の根幹である正当な人事権を否定しこれに従わないのであるから懲戒解雇は権利濫用ではなく正当であるといわねばならない。