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ID番号 00615
事件名 雇用関係存続確認等請求控訴事件
いわゆる事件名 古河鉱業事件
争点
事案概要  経営状態の改善、生産性向上を目的とする人員整理において、就業規則に基づいて解雇された既婚の女子工員が、雇用契約上の地位確認等を請求した事例。(一審 請求棄却、当審 控訴棄却)
参照法条 労働基準法89条
民法1条3項
体系項目 解雇(民事) / 解雇事由 / 就業規則所定の解雇事由の意義
解雇(民事) / 整理解雇 / 整理解雇基準・被解雇者選定の合理性
裁判年月日 1976年8月30日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 昭和45年 (ネ) 2988 
裁判結果 棄却(上告)
出典 労働民例集27巻3・4合併号445頁/時報838号87頁
審級関係 上告審/00617/最高一小/昭52.12.15/昭和51年(オ)1240号
評釈論文
判決理由  〔解雇―解雇事由―就業規則所定の解雇事由の意義〕
 労働協約と就業規則とが、それぞれ別箇の解雇基準を定めている場合、労働協約が優先することは所論のとおりである。従って労働協約と就業規則とが、同じ解雇条項につき異なる基準を定めている場合には、就業規則により解雇することが可能であったとしても、労働協約により解雇できない以上、従業員の解雇は許されない。被控訴人が控訴人を就業規則第七三条により解雇したことは、当事者間に争いがないところ、それが労働協約により解雇できない場合には、控訴人に対する就業規則に基づく右解雇は無効であるというの外ない。
 そこで、本件解雇は労働協約第二九条によって可能かどうかにつき検討する。労働協約第二九条は、経営上の事情による解雇事由として、「天災事変その他やむをえない事由のため事業の継続が不可能となったとき」の外、「その他前各号に準ずるやむをえない事由があるとき」(第五号)を挙げているが、右第五号は企業経営上人員整理の必要が生じた場合その他を予想して、解雇制限に弾力性をもたせるために設けたものと解せられる。そして右にいう人員整理は、天災事変に匹敵する事情により事業の継続が不可能となった場合でなくとも、企業を合理化して生産性を向上し、復配体制を確立するために行う場合もこれを含むものと解されるので、このような人員整理の必要が生じた場合、右第五号によって従業員を解雇することは許されるものというべきであり、本件解雇が右人員整理のため行われたものであることは、これまでるる説示したとおりである。
 〔解雇―整理解雇―整理解雇基準〕
 右認定事実に、《証拠略》をあわせると、本件解雇は企業合理化のため、人員殊に間接部門の従業員を整理する必要に迫られ、諸般の事情を考慮した結果、控訴人を解雇することになった事実(詳細は原判決理由のとおり)が認められ、右と異なる《証拠略》は措信しない。そうすると、本件解雇は、企業合理化に藉口した既婚女子の解雇であるということはできず、また控訴人主張の憲法及び労働基準法の各法条に違反するものではない。さらに本件全証拠によるも、本件解雇が被控訴人の労働政策に反対して来た控訴人を職場から排除するためのものであった事実は認められないので、右事実の存在を前提とする解雇権濫用の主張も採用しない。