全 情 報

ID番号 00626
事件名 地位保全仮処分申請控訴事件
いわゆる事件名 青山学院事件
争点
事案概要  学科の廃止を理由として副手(嘱託)を解雇した大学に対して、地位の保全が求められた事例。(一審 申請却下、二審 申請棄却)
参照法条 民法627条
体系項目 解雇(民事) / 整理解雇 / 整理解雇の必要性
裁判年月日 1978年2月20日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 昭和51年 (ネ) 280 
裁判結果 取消
出典 労働民例集29巻1号97頁/労経速報977号22頁/労働判例294号49頁
審級関係 一審/東京地/昭51. 1. 8/昭和48年(ヨ)2290号
評釈論文
判決理由  よって案ずるに、神学科の入学者が過去一〇年間毎年約二〇名であったこと及び控訴人が昭和四七年一一月二一日昭和四八年度以降同学科の学生募集を行わない旨決定したことは当事者間に争いがなく、(書証・人証略)中、神学科廃科はA院長と神学等につき見解を異にする神学科教員の排除を目的とするものであるという趣旨の部分は措信できず、他に右認定を左右する疎明はない。
 そうすると、神学科廃科は被控訴人主張のごとく擬装廃科ではなく、控訴人の被控訴人に対する右解雇は、神学科の学生募集停止及び神学科廃科に伴うものであることが認められる。
 三 被控訴人は、被控訴人と雇用関係にあるのは控訴人であって、文学部神学科ではないから、神学科が廃科されたとしても、控訴人は被控訴人を文学部の他学科または他学部へ配転すべきであると主張する。
 よって案ずるに、被控訴人と雇用関係にあるのは控訴人であって、文学部神学科でないことは当事者間に争いがないが、(書証・人証略)によれば、就業規則上控訴人が、業務縮小により生じた過剰人員を配転すべき義務を負うのは、職員についてであって、業務の必要に応じ置くことになっている嘱託(副手)についてではないこと、文学部副手は研究室の諸施設及び同室配置の図書の管理、講義、演習、実験等の実施に関する事務、当該学科に関する学会の事務、その他文学部長及び学科主任が指示する事項といった、いうならば当該学科に属する雑務的事務を掌るものであって、職員が公募の上学校法人理事会の決定により採用されるのと異なり、その採用は当該学科の学科主任が、その学科の卒業生中から選んで学部長に推せんし、学部長の上申に基づき学長が決定採用するものであること、その学科の卒業生を副手採用の対象とするのは、当該学科の卒業生はその学科の教員と知合が多く、その学科の専門分野の知識を有するところから、その学科の右のごとき雑務的事務の処理に適しているがためであること、嘱託(副手)はその労働条件においても、職員が定年制であるのに対して、雇用期間の定があり、職員の週六日制に対し週五日制であること、その給与は職員の八割であり、賞与も年間二か月分の給与相当額の定率支給であって、この点も職員と異なることが認められる。
 右認定事実によると、文学部神学科副手である被控訴人は就業規則上配転の対象とならないのみならず、その雇用関係にあるのは文学部神学科ではなく、控訴人である点において職員ないし文学部他学科の副手と同一であるとしても、その採用及び労働条件において職員ないし文学部他学科の副手と相違し、従って右両者は労働契約により約定された労働の種類が異なることが認められるので、神学科が廃科になっても、控訴人は被控訴人を文学部の他学科または他学部へ配転する義務はないものといわなければならない。
 (中 略)
 そうすると、前記解雇の意思表示は有効であり、従って被控訴人は昭和五二年三月三一日をもって、控訴人の従業員たる地位を喪失したものというべきである。