全 情 報

ID番号 00651
事件名 地位保全等仮処分申請控訴事件
いわゆる事件名 名村造船所事件
争点
事案概要  経営危機打開策として出向、一時帰休等の措置をとってきたが状況の好転が望めないとして控訴会社が整理解雇を行ったことに対し、整理解雇された被控訴人らが地位保全等の仮処分を求めた事例(一審申請認容、控訴棄却)。
参照法条 民法627条
労働基準法89条1項3号
体系項目 解雇(民事) / 整理解雇 / 整理解雇の回避努力義務
裁判年月日 1985年7月31日
裁判所名 大阪高
裁判形式 判決
事件番号 昭和56年 (ネ) 1084 
裁判結果 棄却
出典 タイムズ604号109頁/労働判例457号9頁
審級関係 一審/00636/大阪地/昭56. 5. 8/昭和54年(ヨ)1965号
評釈論文 野間賢・季刊労働法138号205~207頁1986年1月
判決理由  しかしながら、整理解雇は労働者の側に何ら責むべき事由がないにもかかわらず、使用者側の経営の危機克服という一方的事由によって企業から放逐されるものであるから、仮令整理解雇に先立ち控訴会社が適切妥当な解雇回避措置を講じてきたとしても、解雇時点において、真実その必要性が存するか否かは当然問われなければならず、解雇の必要性がなければもとよりのこと、なお解雇を回避することが可能であれば解雇回避措置を執るべきであって、それらをなさないまま解雇した場合には、右解雇権の濫用となるといわなければならない。
 (中 略)
 以上一応認定した事実によれば、控訴会社の立案した要員計画は、既受注船の工事量、引合いのある未契約の工事量及び将来の見込受注船の工事量を基礎にして算出された計画操業時間をもとにし、どうしても実現しなければならないと考えられた年間所定労働時間や出勤率を考慮したうえ立案されたものであって、具体的根拠を有し、後記のとおり疑問点は存するものの、会社再建を目差す控訴会社の指標としては一応の合理性を有するものであるといえる。
 2 しかしながら、将来の指標としていかに適切妥当な要員計画であるとしても、これが直ちに整理解雇の根拠となるものではない。なぜなら、整理解雇は、前記のとおり、労働者の側に何ら責むべき事由が存しないにもかかわらず企業から放逐されるのであるから、必要やむを得ない場合に限り許容されるものであって、実現もされていない数値をもとにして算出された要員計画に基づき、会社の経営合理化の理想を実現するために、まず解雇が優先されてはならないからである。それ故、要員計画の基礎となった数値については、現実の数値に引直したうえ人員削減の必要性があるか否かを検討し、なおその必要がある場合にのみ整理解雇し得るといわなければならない。
 そこで、右の観点から要員計画をみてみると、計画操業時間を二一九万時間と
 (中 略)
 いずれにしても、本件整理解雇時点において被控訴人ら九名を削減しなければならない必要性は要員計画上からは何ら存しなかったといわなければならない。