全 情 報

ID番号 00692
事件名 仮処分申請事件
いわゆる事件名 共立薬科大学事件
争点
事案概要  二年の期限を定めて採用された私立大学の職員が父兄、学生を煽動し団体行動によって理事に反抗したこと等の理由により解雇された事件で、右職員(助教授)が解雇の効力の停止、解雇以前と同様に授業を担当させる等職務に就かせることを求めて仮処分申請をした事例。(申請認容、ただし後者については仮処分の必要性を否定)
参照法条 民法628条
体系項目 解雇(民事) / 解雇事由 / 已ムコトヲ得サル事由(民法628条)
解雇(民事) / 解雇と争訟・付調停
裁判年月日 1951年11月24日
裁判所名 東京地
裁判形式 決定
事件番号 昭和26年 (ヨ) 4042 
裁判結果
出典 労働民例集2巻5号570頁
審級関係
評釈論文
判決理由  〔解雇―解雇事由―已ムコトヲ得サル事由(民法六二八条)〕
 申請人両名が、かねてよりR教授に対し反対の立場を持し、昭和二十六年四月前記三名の退職に際し理事ら及びR教授に反対する活動をなし同年五月十七日の会合においてR教授に対する退職勧告の教授会の決議に賛成する署名をなし、他の教職員と共に理事長らに対し決議の趣旨を伝えたことについては疏明ありとなすべきも、申請人両名が父兄、学生を煽動し団体行動によって理事らに反抗し所謂学校騒動の主因をなしたこと及びR教授に暴行を加え理事長らに罵詈暴言を吐き大侮辱を加えたことについては、その疏明足らざるものと言うほかない。而して右五月十七日の会合の席上理事長らに対し前記のような暴言をなすことは、もとより、教育に携るものとして適わしからざることであることは言うまでもないが、これを申請人両名の責に帰せしめるに足る疏明の足らざること前記のとおりである以上、申請人両名につき認められる前記言動をもって、他の教職員と区別してこれを民法第六百二十八条にいう已むことを得ざる解除の事由に該当するものとなすに由なきものというほかない。
 〔解雇―解雇と争訟〕
 申請人らに対する解雇が無効であって、申請人らと被申請人との間に従前の雇傭関係が存続しているものと一応認めるべきことは前記の通りであり、また申請人らが被申請人より助教授として依嘱され助教授として化学或は薬品分析化学の授業を担当していたこと並に申請人Aが図書館長を兼ねていたことは、疏明により明らかであるが、申請人らの受くる前記損害を避けるためには、必ずしも常に右と全く同様な関係を仮に設定する必要ありとはなし難く、被申請人学校においては昭和二十六年八月末教養課目を除くその余の課目の教授その他を一旦退職せしめて新に教授講師を多数任命し、その授業担当を定め、授業を継続していること及び被申請人学校においては、授業担当は教授会の議によって定められることが疏明によって認められまた疏明によれば、被申請人学校においては従来教授の数も少く制規の教授会も設置されていなかったが、右任命とともに学校運営上にも変化がうかがわれるのに助教授の任命につき従来通り被申請人学校が教授会に諮問その他を要せず自由に為し得るかについてこれを明らかにする疏明に乏しいので、これらの事情に照せば、申請人らをして仮に助教授たる地位につかしめ、その地位のもとに前記授業を担当せしめることは、適当とは為し難く、一応従前の雇傭関係が存続すると同様の取扱を受ける状態を仮に設定すれば足るものと考えられるので本件仮処分の申請の趣旨に照し、被申請人の任意の履行により仮処分の目的を達し得るものと認められる本件においては被申請人が申請人らに対し為した昭和二十六年七月六日の解雇の意思表示の効力を停止するをもって足るものと考えざるを得ない。