全 情 報

ID番号 00760
事件名 地位保全仮処分請求控訴事件
いわゆる事件名 興国化学事件
争点
事案概要  採用の際の誓約に反し会社就業規則に従うことを将来とも全面否定したことが「採用の場合の誓約に反する行為」に準ずる理由がある等として解雇された従業員が、右解雇は無効であるとして地位保全を求めた仮処分申請事件。(申請認容)
参照法条 労働基準法89条1項3号
体系項目 解雇(民事) / 解雇事由 / 上司反抗
裁判年月日 1970年9月29日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 昭和44年 (ネ) 1277 
裁判結果 棄却
出典 東高民時報21巻9号199頁/タイムズ257号281頁
審級関係
評釈論文
判決理由  昭和四〇年七月当時会社で実施されていた就業規則三五条には、従業員解雇事由として、
 (中 略)
 七、採用の場合の誓約に反する行為のあつたとき
 (中 略)
 一〇、その他前各号に準ずる理由があるとき
 (中 略)
 の解雇事由を定め、同規則三六条一、二項には前条を承けて労基法二〇条と同旨の規定を置いているから、同規則三五条は即時解雇、通常解雇を通じ会社自ら従業員解雇事由を列挙して解雇権を制限したものでこれに違反した解雇は無効であると解するのが相当である。
 (中 略)
 会社の就業規則三七条七号についてみるのに、同条号には、同条一号のように「業務に堪えられないと認められたとき」とか、同条二号前段のように「甚だしく劣悪」とかのような程度による限定は明規されていないが、同規則三七条によって明らかなとおり、両条号ともひとしく、三〇日間の予告またはこれに代る平均賃金の支払を伴う使用者の一方的意思表示によって労働契約を終了させられる通常解雇の要件であることから考えれば、誓約違反が労働契約関係存続の前提である信頼関係を破壊する程度の不誠実と認められるときに限ると解すべきであり、したがって、これに準ずる同条一〇号も同様に解するのが相当である。ところで、前記1のとおり、被控訴人は会社従業員となるとき就業規則を守ることを会社に誓約したのであるから、前記2、3、6のとおり、被控訴人が昭和四〇年七月一四日会社上司に対し就業規則または誓約を守る意思がない旨言明したことは一見就業規則または誓約に従うことを全面的に否定したように見えないではない。しかし、(中 略)。
 被控訴人が採用の際の誓約に反し会社の就業規則に従う必要もこれに従う意思もないと上司に放言した趣旨は控訴人側の就業規則の解釈適用の不当であることを非難したものであって、真実就業規則を守らない意図を表明したものでないことが認められるので、これをもって解雇に当るということはできない。