全 情 報

ID番号 00761
事件名 地位保全等仮処分申請事件
いわゆる事件名 日本金属事件
争点
事案概要  組合員に早出勤務拒否を指示したこと、就業時間中のたび重なる職場離脱、無許可集会実施等が就業規則所定の懲戒事由にあたるとして解雇された組合支部長が、右解雇は不当労働行為にあたり無効である等として地位保全等求めた仮処分申請事件。(地位保全、賃金仮払のみ認容)
参照法条 労働基準法36条,89条1項9号
体系項目 解雇(民事) / 解雇事由 / 道交法違反
労働時間(民事) / 時間外・休日労働 / 時間外・休日労働の義務
裁判年月日 1970年12月24日
裁判所名 横浜地
裁判形式 判決
事件番号 昭和42年 (ヨ) 712 
裁判結果
出典 労働判例123号23頁
審級関係
評釈論文
判決理由  〔労働時間―時間外・休日労働―時間外・休日労働の義務〕
 労働基準法三六条に規定される時間外又は休日労働に関する協定(以下三六協定という)は、使用者が、労働者に時間外又は休日の労働をさせても処罰されないという刑事上の免責の効果を生じさせるための条件にすぎず、それ自体としては労働者に時間外又は休日の労働をする義務を生じさせるような民事上の効力を有しない。
 三六協定成立後に使用者が、個別的・具体的に時間外労働についての申し込みをし、個個の労働者が自由な意思によって、当該時間外労働に服すべきことを承諾したときに、はじめて当該時間外労働に関し労働義務が生ずるのである。
 本件においても、前記(二)の時間外労働に関する協定が存在しても、会社と前記剪断係の個々の労働者との間に、個別的な本件早出勤務に関する合意が成立しなければ、同人らに本件早出勤務に服すべき義務がなく、したがって、会社の発した業務命令もその根拠を欠き無効であることに帰着する。
 そして、前記(一)の認定事実によれば、前記剪断係五名は、本件早出出勤日の前日である三月四日、会社からの早出勤務の指示(申し込み)に対し、明らかに承諾しない旨の回答をしているのであり、これに先立ち前記五名が三月三日会社の当初の指示に対し一応は諒承した事実があっても、ことの全体的な経緯からみれば、早出勤務に関する合意は成立したものとは認め難い。そうとすれば、同人らに早出勤務に服すべき義務は生じていないから、その後に出された業務命令はその根拠を欠く無効なものであると解される。それ故、同人らのうちAを除く四名が早出勤務に就かなかったことは不当とはいえない。
 〔解雇―解雇事由―道交法違反〕
 本件解雇は就業規則所定の解雇事由に該当しない比較的軽微な違反もしくは形式的(手続的)な違反行為を理由とするものであり、かつ、右行為は原動機付自転車の無許可運転の件を除き他は全て組合活動に附随して起ったものであるから、その違反行為に対し苛酷な解雇をもってのぞむことは解雇権の乱用になると解するのが相当である。したがって本件解雇の意思表示は無効であるから申請人は依然労働契約上の地位を有するものと認められる。