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ID番号 00830
事件名 雇用関係確認請求控訴事件
いわゆる事件名 大同メタル工業事件
争点
事案概要  過激派を支援していること、職場規律を乱し生産阻害をしたこと、犯人蔵匿罪容疑による逮捕が報道されたこと、を理由とする普通解雇につき、その解雇事由は存在しないとして雇用関係の確認を求めた事例。(一審 請求認容、控訴審 原審 取消請求棄却)
参照法条 労働基準法89条1項9号
体系項目 解雇(民事) / 解雇事由 / 被疑者の隠匿
裁判年月日 1981年3月26日
裁判所名 名古屋高
裁判形式 判決
事件番号 昭和54年 (ネ) 112 
裁判結果 (上告)
出典 労経速報1086号3頁
審級関係 上告審/01979/最高一小/昭59. 2. 9/昭和56年(オ)579号
評釈論文
判決理由  (一)控訴人会社の規則二三条六号によれば、普通解雇事由として「その他前各号に準ずる程度の事由あるとき」とする一般条項を置いており、右前各号には、従業員として心身的欠陥又は老衰のため企業経営上雇用契約を継続しがたい場合(同条一、二号)、事業経営上やむをえない都合のあるとき(同条五号)、等を規定している。右各規定の趣旨、内容からすると、同条六号の趣旨は、前各号には直接該当しないが、従業員の行動が、職場秩序、規律の維持、企業の円滑な運営上、解雇させてもやむをえないと認められる程度の不適格性を具えておれば解雇できるものと解すべきである。
 (中 略)
 (二)(中 略)。 本件にあらわれた被控訴人の各所為を合わせ考えると、被控訴人が反社会的暴力集団である連合赤軍の一員ないし支援者として、これと極めて密接な関係を持っていたものであり、また会社内部においても、職場の規律及び秩序を乱し、ひいては生産の阻害をもたらすおそれのある前記判示(原判決理由6(一)ないし(三))のような活動を行っていたものと認めるのが相当である。
 (三)被控訴人が控訴人会社の従業員であること、及び前記容疑事実によって逮捕、勾留された事実が広くテレビ、新聞等で報道されたことは、引用にかかる原判決認定とおりであり、
 (中 略)
 この報道が、企業としての控訴人会社の信用ないし社会的評価にある程度の悪影響を及ぼしたことが認められる。これらの点について、被控訴人は、右報道による会社の信用失墜、事業への影響の責任は、被控訴人について、被疑事実が認められず、不起訴処分となった以上報道機関に向けられるべき問題である旨主張するが、右不起訴処分は、犯意について証拠不充分とするもので、被控訴人が、A、B両名を泊めた事実まで否定するものではないから、これを前提とする報道による控訴人会社への影響の責任の一端は被控訴人についても認められるべきものといわねばならない。
 (四)以上の点に引用にかかる原判決認定の被控訴人の勤務成績が良好でなかった事実を総合すると、被控訴人会社において、今後職場の規律、秩序を維持し、企業の円滑な運営を期するためには、被控訴人との雇用関係を解消するのもやむをえないものと認めるのが相当である。