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ID番号 00859
事件名 給料請求事件
いわゆる事件名 川尻炭砿事件
争点
事案概要  一個の契約をもって二個の会社と雇用契約を締結した場合における両会社の賃金支払義務の関係が争われた事例。
参照法条 労働基準法11条
民法624条
体系項目 賃金(民事) / 賃金請求権の発生 / 二会社との雇用契約と賃金請求権
裁判年月日 1957年6月24日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 昭和31年 (ネ) 1451 
裁判結果 棄却
出典 高裁民集10巻4号252頁/東高民時報8巻6号105頁/タイムズ72号66頁/ジユリスト137号70頁
審級関係
評釈論文
判決理由  そこで右各事実に照して本件唯一の争点である、被控訴人が控訴会社に雇われたものであるか、A株式会社に雇われたものであるかの点を考えてみるのに、被控訴人が右両会社の代表者であるBから両会社の仕事をしてくれとのことで雇傭契約が結ばれ、また被控訴人は現実両会社の事務に従事したものであり、右両会社名義の給料明細表が出されている点等から考え、両会社において被控訴人を雇う旨の明かな意思表示がなかったにせよ(本件雇傭契約では辞令等何等の書面も作成されていない。この点は被控訴本人の原審供述により明かである)、被控訴人は同時に一個の契約を以て右両会社との間に雇傭契約を結んだものと認めるのが相当であって、原審証人C、D、当審証人Eの各証言、被控訴本人の原審並に当審第一回供述、控訴会社代表者Bの当審供述中右認定に反する部分はこれを採用することはできず、他に右認定を覆すに足る証拠はない。
 そうすれば被控訴人が控訴会社だけに雇われたものであるとする被控訴人の主張はこれを採用することはできないのであるが、控訴会社とAとの両会社に雇われたものとする予備的主張は正当であり、被控訴人が右両会社に一個の契約を以て雇われたものとすれば、右雇傭契約は商事会社である右両会社の営業のためにせられたものと認むべきであって、右雇傭契約から生ずる給料支払の債務は右両会社のため商行為たる行為によって負担せられたものと認められるので、商法第五一一条第一項の規定により、控訴会社は被控訴人に対し右訴外会社と連帯して給料支払の義務を負うものと解すべきである。