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ID番号 00896
事件名 賃金請求控訴事件
いわゆる事件名 横浜技術廠相模本廠事件
争点
事案概要  被解雇者に対する賃金の遡及払にあたって右被解雇者が他で働いて得た賃金の控除の可否、その限度が争われた事例。
参照法条 民法536条2項
労働基準法26条
体系項目 賃金(民事) / 賃金請求権の発生 / バックペイと中間収入の控除
裁判年月日 1962年10月27日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 昭和35年 (ネ) 1239 
裁判結果 変更
出典 労働民例集13巻5号1072頁/時報328号33頁/東高民時報13巻10号176頁
審級関係
評釈論文
判決理由  民法第五三六条二項但書にいわゆる「債務を免れたるに因りて得たる利益」とは、単に債務を免れたために支出しないで済んだ利益に限るものと解すべきではなく、労務の給付を免れた債務者がこれに因って得た時間を利用し他で働くことにより通常得られる程度の賃金を得た場合には、その賃金は債務を免れたことと相当因果関係にあり、したがってこれをもって「債務を免れたるに因りて得たる利益」と解するのが相当であるから、これを債権者たる使用者に償還すべきであり、この場合償還するというのは労働者の受くべき反対給付たる賃金額からこれを控除すべきものと解するのを相当とする。債権者の受領遅滞の場合債務者たる労働者が他で定職を得ることが相当に困難であるとしても、被控訴人主張の如く異例であるとは認められない。
 労務の給付を免れた債務者が他に就職して得た収入は免れた労働時間を利用して得たものであるから、本来労務を提供して受くべきであった賃金に対応するものであって、労働者の財源としてはその賃金の一部と同一視すべきものであるから、これを控除することは労働者の賃金確保の必要から定められた労働基準法第二四条にはなんら牴触しないものというべきである。
 (中 略)
 しかしながら、労働基準法第二六条が休業の場合につき平均賃金の少くとも六割に相当する手当の支払を命じ、違反行為に対する罰則規定をもってこれを強行している趣旨に徴すれば右別途収入は労務者の平均賃金の四割を超えない限度において右期間に受くべかりし被控訴人の賃金より控除しうるものと解するを相当とする。