全 情 報

ID番号 01019
事件名 賃金請求控訴事件
いわゆる事件名 山口放送事件
争点
事案概要  会社のロックアウトにより就労を拒否された組合員らが、ロックアウト期間中の賃金を請求した事例。(一審 請求認容、当審 控訴一部認容、一部棄却)
参照法条 民法536条2項
労働基準法3章
体系項目 賃金(民事) / 賃金請求権の発生 / ロックアウトと賃金請求権
裁判年月日 1976年2月9日
裁判所名 広島高
裁判形式 判決
事件番号 昭和45年 (ネ) 254 
昭和45年 (ネ) 297 
裁判結果 一部認容、一部棄却
出典 労働判例249号12頁
審級関係
評釈論文 平田秀光・労働判例249号4頁
判決理由  およそ労働者の行うストライキその他の争議行為は、その性質上多かれ少なかれ経営上の損害をもたらすものであり、右損害を回避するために使用者においてロックアウトをすることが当然に許されるものでないことは勿論であり、このことは労働者側の争議行為に違法なものがあるとしても同様であって、使用者が労働者に対して右の違法な争議行為に関し、債務不履行、不法行為等にもとづく責任を問うことは別として、右争議行為の具体的な態様を離れて、たんにそれが違法であるということのみで対抗手段としてのロックアウトを正当視させることはできない。ロックアウトが使用者の正当な争議行為として対象労働者に対する雇傭契約上の賃金支払義務を免れしめるものであるためには、具体的な労働争議の場において、もともとは衡平の原則に依拠して法が認めた労働者側の争議行為により、かえって労使間の勢力の均衡が破れ、使用者側が著しく不利な圧力を受けるようになったため、右衡平の原則に照らし使用者側が対抗手段として労務の受領拒否をすることが相当であると認められるような情況の存することが必要とされるのである。
 (中 略)
 本件ロックアウト突入当時は、本社全部門の観点からみれば、いまだ労使の勢力の均衡は破れておらず、使用者側が著しく不利な圧力をうけている情勢にあったということはできない。
 (中 略)
 かかる情勢のもとにおいて、被告会社が本件の如き全面ロックアウトを敢行することは、組合側の前示争議行為に対する対抗防衛手段として相当でなく、違法なものといわざるを得ない。
 前記のとおり本件ロックアウトは正当なものと認め難く、組合の構成員たる原告らが被告会社に対して労務を提供することができなくなったのは被告会社の責に帰すべき事由にもとづくものということができるから、被告会社は民法五三六条二項により原告らに対し、前記「ロックアウト中の賃金額」「夏季手当減額分金額」「年末手当減額分金額」の合計額である別表「請求金額」欄記載の各金員および右各金員のうち「ロックアウト中の賃金額」欄記載の金員に対しては本訴状が被告会社に送達された翌日であることが記録上明らかな昭和四二年七月二一日から、「夏季手当減額分金額」欄記載の金員に対しては、被告会社の同年度夏季手当支給日の翌日である同月二三日(《証拠略》によって認められる)から、「年末手当減額分金額」欄記載の金員に対しては被告会社の同年度年末手当支給日の翌日である同年一二月一七日(上記の日時は《証拠略》により明らかである)から、各完済にいたるまで民法所定年五分の割合による遅延損害金を支払うべき義務があること明らかである。