全 情 報

ID番号 01030
事件名 金員仮払仮処分申請事件
いわゆる事件名 安威川生コンクリート工業事件
争点
事案概要  抜打ストや残業拒否をせず誠実に作業に従事する旨の誓約書の提出を求められたが、これを拒否した従業員らが、就労を拒否され、年休取得日を欠勤扱いとされたのに対し、右就労拒否中の賃金、年休取得日の賃金の仮払等求めた仮処分申請の事例。(申請一部認容)
参照法条 労働基準法24条,32条,36条,39条4項
民法624条
体系項目 賃金(民事) / 賃金請求権の発生 / 争議行為・組合活動と賃金請求権
労働時間(民事) / 時間外・休日労働 / 時間外労働、保障協定・規定
年休(民事) / 年休権の法的性質
裁判年月日 1984年8月14日
裁判所名 大阪地
裁判形式 決定
事件番号 昭和59年 (ヨ) 2114 
裁判結果 一部認容
出典 労働判例439号40頁
審級関係
評釈論文
判決理由  〔賃金―賃金請求権の発生―争議行為・組合活動と賃金請求権〕
 被申請人は、被申請人の業務の特殊性からして就労後の抜打的ストライキ・残業拒否の可能性を残した申請人らの労務提供は不誠実なものであるから、賃金支払義務は発生しないと主張する。しかしながら、ストライキ等をする争議権は憲法上認められた労働者の権利であり、将来の抜打的ストライキ等を為さないことを約して労務提供しなければ賃金請求権は発生しないとはいえないのであるから、右被申請人の主張は失当である。
 〔労働時間―時間外・休日労働―時間外労働保障協定・規定〕
 疎明資料によれば、被申請人会社内においては時間外労働が常態となっていること、及び申請人らと被申請人は残業拒否をストライキと同様に扱っていることが一応認められる。そうすると、被申請人・申請人ら間の雇用契約においては、勤務時間は一応八時から一六時までとなっているが、仕事の必要に応じて一定の範囲で勤務時間が延長され、勤務時間が延長された場合の賃金の計算は延長部分に対し時間外手当名下で加算する内容となっていることが一応推認できるので、申請人らの時間外手当請求権(ただし、額は実際に時間外労働がなされることによって確定する。)は被申請人・申請人ら間の雇用契約によって発生していると言える。そして、前記一3の申請人らの労務提供も時間外労働の労務の提供を含むと一応推認できるので、右申請人らは、被申請人の時間外労働の指示がなくとも時間外手当請求権を有するところ、本件のように時間外労働の提供をしたにもかかわらず就労拒否された場合の同請求権の額は過去三ケ月間の申請人らの時間外労働の実績を基にして算出するのが相当である。
 〔年休―年休権の法的性質〕
 被申請人は、被申請人の承認がなければ年次有給休暇は成立しないと主張し、疎明資料によれば、有給休暇を受けようとする時は被申請人の承認を得なければならない旨の就業規則の条項が存するが、年次有給休暇は労働者が休暇の時季指定をすれば使用者が時季変更権の行使をしないかぎり成立するもので、このことは使用者の承認が必要であると定めた就業規則が存しても変わらないと解すべきであるから、右被申請人の主張は失当である。