全 情 報

ID番号 01052
事件名 賃金等仮払仮処分申請事件
いわゆる事件名 小野病院事件
争点
事案概要  経営不振を理由とする病院閉鎖に伴い退職し或いは解雇された選定者らが、未払となっている賞与及び退職金の仮払を求めた事例。(却下)
参照法条 労働基準法2章,24条
体系項目 賃金(民事) / 賞与・ボーナス・一時金 / 賞与請求権
裁判年月日 1982年9月9日
裁判所名 福岡地
裁判形式 決定
事件番号 昭和57年 (ヨ) 715 
裁判結果 却下
出典 労働民例集33巻5号807頁/労働判例402号62頁
審級関係
評釈論文
判決理由  (二)按ずるに、一般に賞与は、就業規則、給与規程などにおいてその支給額が明示されている場合を除いては、その支給の当時における営業成績に応じて経営者がみずからあるいは労使協議を経てその都度決定する性質のものであって、債権者らの主張するような個別的労働契約においてその支給率についてまで確定的に定めてしまう場合は極めて例外的な事例であるといわなければならない。
 (中 略)
 そして、右事実に基づいて考えると、右説明会の席上でなされた同事務長の前記発言は、債務者の意思表示として債権者ら主張のような確定的な率で賞与を支給する旨述べたものとは解することができない。また、前記薬局連絡ノートの債務者の記載については、一見債務者が少なくとも当該年度については年間五か月うち年末三か月の賞与を支給することにしていたことを窺わせるごとくであるが、債務者の主張によれば、債務者が右のような記載をしたのは、賞与を年間五か月うち年末三か月を支給することになった場合についての具体的計算方法について例示した(もっとも、債務者としては試用期間は賞与支給対象期間には入らないと考え、その旨明らかにする心算で右計算式を記載したが、勘違いして誤った計算式を示している。)ものにすぎないというのであり、前記病院給与規程などに照らし右ノートの事務長による記載とも併せて考えると債務者の主張はもっともなものと考えられる。さらに、前記パンフレットの記載についても、その発行の時期、この種の文書の性格、前記給与規程の内容等に照らすと、病院の経営が順調にゆくことを前提とした見込を記載したものにすぎず、これに記載されたような確定的な比率をもって賞与を支給することが当初から労働契約の内容とされていたものと解することはできないものと言うべきである。