全 情 報

ID番号 01066
事件名 退職金請求事件
いわゆる事件名 豊田工機事件
争点
事案概要  人員整理に関連して退職した労働者が退職金を請求した事例。被告会社は、退職金規定は敗戦直後の混乱に対応する一時的応急措置でありすでに失効しており、新規定(協約)に基づく退職金がすでに払われていると主張。(請求棄却)
参照法条 労働基準法11条
体系項目 賃金(民事) / 退職金 / 退職金請求権および支給規程の解釈・計算
裁判年月日 1961年5月31日
裁判所名 名古屋地
裁判形式 判決
事件番号 昭和31年 (ワ) 40 
昭和33年 (ワ) 2111 
裁判結果
出典 労働民例集12巻3号484頁
審級関係
評釈論文 後藤清・季刊労働法44号75頁
判決理由  右協定はその当事者、内容、形式からみてその性質は労働協約であり、原告等の退職金については従前の労働協約に基く退職手当金規定による退職金の定めを変更したものといわなければならない。そして右協約の効力は原告等が右協定成立当時右組合の組合員であり、又それ以前に被告会社を退職していない限り、原告等に及ぶものといわなければならないが、成立に争のない乙第一五号証の記載によれば、右協定成立当時原告等が右組合の組合員であったことが認められ、又原告等が右協定成立以前において被告会社を退職していたことを認むべき証拠はない。尤も前記のとおり被告会社は原告等に対し昭和二九年九月一〇日解雇通知を発したが、右は三〇日前の予告を伴わなかったものであるから同日解雇の効力を発生しないものであり、又同日の通知を解雇の予告と解しても右協定成立当時は未だ三〇日を経過していない(九月一〇日の組合に対する解雇通知を予告と解しても未だ三〇日を経過しない)から協定成立当時は解雇の効力を発生していないものといわねばならない。従って右協定成立当時原告等は未だ被告会社の従業員たる地位にあったものというべきである。よって右協約の効力は組合員にして被告会社の従業員たる原告等に及び、原告等を拘束するものといわなければならない。而して前記の如く右協約はその内容において原告等の退職金につき従前の退職手当金規定によることを変更し、特別の定めをしたものであるから、原告等は自己の退職金につき従前の退職手当金規定に基いてこれを請求する権利を有せず、唯右協約の定めるところによってその支払を請求する権利を有するに過ぎないものというべきである。