全 情 報

ID番号 01098
事件名 退職金犯請求事件、損害金請求事件
いわゆる事件名 奥田会計事務所事件
争点
事案概要  会計事務所に五年間勤務税理士として勤めた後独立、開業しようとした税理士が、退職金を半額に減額され、従来担当していた複数の顧問先に偽造文書を送付されたのに対し、職員勤務規定に基づく退職金の金全支給と名誉、信用の毀損を理由とする慰藉料の支払を求めた事例。(請求認容)
参照法条 労働基準法89条1項3号の2
体系項目 賃金(民事) / 退職金 / 懲戒等の際の支給制限
裁判年月日 1984年5月15日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和57年 (ワ) 4954 
昭和57年 (ワ) 10907 
裁判結果 一部認容、一部棄却
出典 労経速報1196号13頁
審級関係
評釈論文
判決理由  まず、原告の退職金請求につき検討する。退職金は、古くは労働者に対する雇用主の恩恵的支給であると考えられていたこともあったが、今日では、これを必ずしも恩恵的なものにすぎないとは考えず、少なくとも、就業規則その他により支給基準が明確になっている場合にあっては、退職金は賃金の後払い的性質を有するものであり、労働者は、法的に退職金請求権を有するものである、と解するのが一般である。本件においても、原告の退職金は、被告職員勤務規定により具体的に算出しうるものであり、したがって、その財源が労働者の在職中の給与からの控除によるものか雇用主の出資によるものかにかかわらず、単なる雇用主の恩恵的給付にとどまるものではなく、法的権利であると解すべきである。ところで、被告職員勤務規定第一四条が「重大なる過失刑罰にて退職する者、勤務成績甚だしく悪く規律を乱したる者には規定の退職金を否認削減することあるべし」と規定していることは前認定のとおりであるが、原告が自己都合で退職したものであることは前認定の事情から明らかであり、したがって、「重大なる過失刑罰にて退職する者」には該当せず、また、前認定の事情をもってしては「勤務成績甚だしく悪く規律を乱したる者」にあたるとは認められないから、右規定をもって原告の退職金を減額又は否認することはできないものであると解する。