全 情 報

ID番号 01121
事件名 退職金返還請求事件
いわゆる事件名 三晃社事件
争点
事案概要  広告代理業を営む会社が、同業他社への転職の場合には退職金を二分の一に減額する旨の就業規則の定めに基づいて、社員であった者に対して受領済の退職金の半額の返還を請求した事例。(請求棄却)
参照法条 労働基準法16条
体系項目 賃金(民事) / 退職金 / 競業避止と退職金
就業規則(民事) / 就業規則の法的性質・意義・就業規則の成立
裁判年月日 1975年7月18日
裁判所名 名古屋地
裁判形式 判決
事件番号 昭和48年 (ワ) 2145 
裁判結果 棄却(控訴)
出典 時報792号87頁
審級関係 控訴審/01122/名古屋高/昭51. 9.14/昭和50年(ネ)338号
評釈論文 阿久沢亀夫・判例評論206号37頁
判決理由  〔賃金―退職金―競業避止と退職金〕
 右認定の各事実によれば、被告と原告会社間には、被告が退職後同業他社に就職する場合には自己都合退職金の半額が不支給となる旨の契約があったことが認められる。右契約においては、競業を禁止する旨の明示的な文言は見当らないが、退職金の半額を不支給にすることによって間接的に労働者に競業避止義務を課したものであることは否定できない。しかして、原告会社においては就業規則等により退職金の支給及び支給基準が明確になっており、退職時にその額が確定することは明らかである。そうすると、労働者たる被告が前記義務に違反した場合には退職時に退職金の半額を没収するという損害賠償の予定を約定したものと解することができる。かかる労働契約に関する賠償額予定の約定が労基法一六条に違反し無効であることは明らかであるから、前記退職金規定のうちこの点に関する規定はその合理性についての主張を検討するまでもなく、無効といわなければならない。
 〔就業規則―就業規則の法的性質〕
 就業規則及びこれに付随する諸規定は当該事業場内での社会規範たるにとどまらず、法的規範としての性質を認められているものと解すべきであるから、当該事業場の労働者は、就業規則等の存在及び内容を現実に知っていると否とにかかわらず、また、これに対して個別的に同意を与えたかどうかを問わず、当然に、その適用を受けるものというべきである。