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ID番号 01190
事件名 時間外割増賃金請求事件
いわゆる事件名 大阪淡路交通事件
争点
事案概要  走行距離に基づき労働時間を計算されていた観光バス運転手らが実労働時間による計算を主張しこれにより算出された時間外労働につき時間外労働手当と附加金の支払を求めた事例。(一部認容)
参照法条 労働基準法32条,37条,114条
体系項目 賃金(民事) / 割増賃金 / 割増賃金の算定方法
労働時間(民事) / 労働時間の概念 / 手待時間
労働時間(民事) / 労働時間の概念 / 出張の往復時間
雑則(民事) / 附加金
裁判年月日 1982年3月29日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 昭和53年 (ワ) 5391 
昭和54年 (ワ) 6053 
昭和55年 (ワ) 5961 
昭和56年 (ワ) 3445 
裁判結果 一部認容
出典 労働判例386号16頁/労経速報1127号14頁
審級関係
評釈論文
判決理由  〔賃金―割増賃金―割増賃金の算定基礎・各種手当〕
 拘束時間九時間内において、走行距離二一〇キロメートル以上の労働密度があった場合には、労働基準法所定の時間外労働割増賃金とは異質な特別の割増賃金、換言すれば、所定時間内賃金の割増金が支払われるが、それ以外の場合には、前記計算方法による労働時間が拘束時間から休憩時間一時間を差引いた時間を超えている限り、拘束時間から被告所定の休憩時間一時間を差引いた時間(労働密度とは関係のない労働時間そのもの)に対応する所定内賃金及び労働基準法所定の割合による時間外労働割増賃金が支払われるが、前記計算方法による労働時間が拘束時間から休憩時間一時間を差引いた時間に足りない場合には、拘束時間から一時間を差引いた時間が八時間を超えていても、それに対応する労働基準法所定の時間外労働割増賃金が、前記計算方法による労働時間の八時間を超えた分に対する部分のみそれに対応した分しか支払われないか、まったく支払われず、ただ、拘束時間から被告所定の休憩時間一時間を差引いた時間から時間外労働割増賃金が支払われた時間を除いた時間に対し、前記基準による時差手当が支払われるに過ぎないこととなり、結局、労働基準法所定の労働時間八時間と休憩時間一時間との合計九時間を超えた労働時間に対しては、労働密度を斟酌した賃金の支払部分はなく、しかも右労働時間中、時差手当の支給の対象となった時間に対しては、労働基準法所定の時間外割増賃金より少ない時差手当しか支払われず、同法所定の時間外労働割増賃金は支払われないことになっていたものというべきであるから、被告は、原告らに対し、右時差手当を支給した時間に対し、その時間数に応じた労働基準法所定の時間外労働割増賃金を支払うべき義務があることとなる。
 〔労働時間―労働時間の概念―手待時間〕
 2 次に、駐、停車時間についてみるに、(人証略)によれば、運転手は、駐、停車時間(配車地における場合を含む)においても、客とのスケジュールの確認、客の乗降の安全の確認、車輛の清掃、点検、車輛の内外の監視、駐車場の整理に伴う車輛の移動、車内に残留ないしは途中で車内へ戻ってきた客との応接もしくはその安全の確保、客の要請によるなどの運行スケジュールの変更への対応の準備など、運転そのもの以外の付随的作業をなすことや、いつでも運行できるよう待機する必要があることが認められ、右各証言中、右に反する部分は措信できず、その他に右認定を左右するに足りる証拠はない。
 それによれば、右駐、停車時間は、労働時間であるというべきであって、それを休憩時間とする被告の主張は理由がない。
 〔労働時間―労働時間の概念―出張の往複時間〕
 3 次に、《証拠略》によれば、被告においては、運転手の一日の走行距離の上限が定められている関係から、一運行について二名の運転手を配置して、そのうちの一名が、出勤後に他の交通機関を利用して指定地に赴き、そこで、他の運転手を引継いで乗務する場合や、指定地まで運行した後、そこで、他の運転手に運行を引継いだ後、他の交通機関を利用して帰社する場合のあることが認められるが、それによると、右他の交通機関を利用している時間は、格別に作業を義務づけられないとはいえ、指定地までの運行及び指定地からの運行に不可欠なものであって、被告の業務命令に基づくものであって、出発地及び帰着地が被告の所在地と定められているものというべきであるから、それに右賃金支払の対象時間となっていることを考え併せると、右時間は、それ自体がその前後の運行の一部を構成するものとして、労働時間であるものと認められる。
 〔雑則―附加金〕
 九 原告らの附加金の請求については、被告による前記時間外労働割増賃金の不払が、(人証略)により、労働組合の了解のもとに実施された前記労働時間及び賃金等の定め方に因って生ずるものであることが認められること、及び労働基準法の解釈の誤りに因って生ずる面が大であることに徴すると、被告に対し、制裁としての附加金の支払を命ずることは相当でないものというべきであるから、原告らの右附加金の請求はすべて理由がない。