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ID番号 01211
事件名 時間外勤務手当請求事件
いわゆる事件名 静岡市教職員事件
争点
事案概要  修学旅行、遠足、運動会等の学校行事並びに職員会議、朝の職員打合せについて、条例で定める勤務時間を超える労働に対する時間外勤務手当を請求した事例。(一部認容)
参照法条 労働基準法32条,37条,41条3号
体系項目 賃金(民事) / 割増賃金 / 違法な時間外労働と割増賃金
労働時間(民事) / 労働時間の概念 / 教職員の勤務時間
裁判年月日 1966年1月29日
裁判所名 静岡地
裁判形式 判決
事件番号 昭和38年 (行) 4 
裁判結果 (控訴)
出典 行裁例集17巻1号64頁/教職員人事関係裁判例集4号248頁
審級関係 上告審/01261/最高三小/昭47.12.26/昭和46年(行ツ)84号
評釈論文
判決理由  〔賃金―割増賃金―違法な時間外労働と割増賃金〕
 原告ら地方公務員にっいてもその時間外勤務手当の基準法として適用のある労働基準法第三七条の規定は、使用者が同法第三三条もしくは同法第三六条の規定によって労働者に時間外勤務をさせた場合、通常賃金の二割五分増しの賃金を支払うべきことを定めたものであって、右規定によらない違法な時間外勤務に対しては割増賃金の支払義務がないものと解すべき余地もないではないが、同法条の立法趣旨が使用者に対し時間外労働に対する割増賃金の支払を強制することによって間接に労働者に対する一日八時間、一週四八時間の労働時間制が守られることを保障する点にあることを考えるならば、かような違法な時間外勤務に対してはなお一層強い理由で時間外勤務手当の請求権が認められなければならないものと解するのが相当であり、この理は静岡県における前記「給与条例」第一五条の解釈についてもおし及ぼされるべきもので、そう解しても何ら教育公務員の労働の特殊性に背反するものではないというべきである。かように解しないで、学校長の違法な時間外勤務命令によつてなされた教職員の時間外勤務に対して手当請求権がないと解するならば、権力服従関係にある原告らとしてはかかる学校長の指示、命令にも従わざるを得ず、教職員に対する勤務時間制は有名無実と化し、種々の弊害を招来するおそれなしとしないのである。
 〔労働時間―労働時間の概念―教職員の勤務時間〕
 原告らの右修学旅行あるいは遠足に従事した勤務をその労働の性質からながめてみると、その実体は生徒の引率または生徒への付添であって教職員の本務に附随する労働というべく、現下の交通事情、旅館等宿泊施設の状況などを勘案する場合その責任の重大であることはこれを認めるにやぶさかでないが、車中あるいは旅館内における原告らの労働は常態として身体の疲労または精神的緊張の著しく高いものではなくて観光ないしレクリエーション的色彩を多分に帯びていることは否定し得ないところであつて、これに付添を希望する教職員も多い実情にあることが認められ、その実質は労働基準法第四一条第三号にいわゆる監視または断続的労働に該り、かつ、客観的にみて同号の許可基準に該当するものと解するのが相当である。そして労働の性質においてそのように解せられる以上行政官庁の許可を受けた者ではなくてもその違法性とはかかわりなく、かかる労働に対する対価としては、時間外勤務の割増賃金支払義務は発生しないものと解するのが妥当である。