全 情 報

ID番号 01244
事件名 未払賃金請求事件
いわゆる事件名 長崎新聞社事件
争点
事案概要  生活補給金は本俸と同一性格の賃金であるから時間外並びに深夜勤務に対する割増賃金はこれを加えた金額を基礎として算定すべきであるとして、割増賃金の未払部分と附加金の支払を請求した事例。(請求一部認容)
参照法条 労働基準法36条,37条
体系項目 賃金(民事) / 割増賃金 / 割増賃金の算定基礎・各種手当
労働時間(民事) / 法内残業 / 割増手当
裁判年月日 1965年6月25日
裁判所名 長崎地
裁判形式 判決
事件番号 昭和39年 (ワ) 242 
裁判結果
出典 労働民例集16巻3号546頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔賃金―割増賃金―割増賃金の算定基礎・各種手当〕
 労働基準法の規定をみるに、同法第三七条第二項同法施行規則第二一条は、家族手当、別居手当、子女教育手当、臨時に支払われた賃金、一箇月を超えるごとに支払われる賃金を割増賃金算定の基礎となるべき賃金から除外しており、後の二つは別として前の三つがかように除外されているのは、それが純粋に労働の対償ではなく、従業員たる地位に附随するものに過ぎないので、時間外勤務をしたからといって増額さるべき性質のものではないとの理由に基づくものと考えられる。
 この見地から本件生活補給金をみると、それが形式的に右の除外例のいずれにも該当しないことは明らかであるし、前認定したところによると正に労働の対象として除外例の適用を受けない実質的理由をも具備しているということができる。しかも本件のような形態の給付につき安易に除外例の適用を認めると、基礎となる賃金の範囲が縮少して正当な割増賃金がそれ丈発生を阻まれ、超過労働をした労働者に、それに見合う補償を与えんとする法の趣旨が容易に潜脱される恐れなしとしない。以上の諸点から判断するとき、本件生活補給金は基準法第三七条にいう時間外並びに深夜勤務の割増賃金の基礎となる賃金に該当すると認むべきである、従って当然これを本俸に加えた上で割増賃金を算定しなければならない。
 〔労働時間―法内残業―割増手当〕
 組合と被告会社間において一日実働七時間制の協約が結ばれていた場合、果して原告等主張のように実働七時間を超えれば被告会社に割増賃金の支払義務が発生するか否かにつき考えるに、右のような協約の存したことは被告の認めるところであるが基準法第三二条、第三六条、第三七条の各規定を通覧すれば、たとい労働協約で一日実働七時間制と定められている場合でも労使間にこれを超えれば割増賃金を支払う旨の合意がない限り実働八時間を超えない勤務に対しては使用者に基準法第三七条第一項に規定する割増賃金の支払義務は発生しないと解するのを相当とし、証人Aの証言に徴するも右のような合意の存在は到底認められない。