全 情 報

ID番号 01278
事件名 残業未払金請求事件
いわゆる事件名 立正運輸事件
争点
事案概要  日給制の賃金の支払を月単位で受けていたトラック運転手らが、長距離運送勤務に従事した日の深夜時間外割増賃金の支給につき労基法所定の計算による割増賃金額に達しない部分の支払を求めた事例。(認定限度で一部原告のみに認容)
参照法条 労働基準法34条1項,37条
体系項目 賃金(民事) / 割増賃金 / 割増賃金の算定方法
休憩(民事) / 「休憩時間」の付与 / 休憩時間の定義
裁判年月日 1983年8月30日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 昭和54年 (ワ) 1596 
裁判結果 一部認容
出典 労経速報1165号20頁/労働判例416号40頁
審級関係
評釈論文 荒木尚志・ジュリスト839号113頁
判決理由  〔賃金―割増賃金―割増の算定方法〕
 原告らの当時の賃金が日給制であったことは、前記のとおり当事者間に争いがなく、これによれば、原告らの深夜時間外割増賃金についても、各勤務日ごとに支給すべき額が計算され、これが当該日の賃金として不足なく支給されていなければならない、というべきである。
 この点につき、被告は、当時の原告らの賃金が毎月二五日締切で月毎にまとめて支給されていたから、右月単位でみて、深夜時間外割増賃金の支給総額が、各自毎に労働基準法所定の計算によって算出した深夜時間外割増賃金額の合計額を、下回らない限りは、当該月の深夜時間外割増賃金の支給不足分は生じない、との旨主張するところもあるが、右のとおり、原告らの当時の賃金が日給制であった以上、たとえ、支払が月単位にまとめて為される場合であっても、計算はあくまで日単位で為すべきであり、労働基準法所定の計算額を超える深夜時間外割増賃金を支給した日についても右超過分は原告らと被告との間の雇用契約所定の支給分であって不当利得分でもないから、被告主張のように月単位でみて、支給すべき額合計を下回らないだけの合計支給額があれば足りる、とすることはできない。
 〔休憩―休憩時間の付与―休憩時間の定義〕
 右勤務内容に照らすと、原告らは、右長距離勤務で社外にあっては、常に、右運転車両及び積荷の管理保管の責任を負っていた、というべきであり、右責任を免除されたとみられる特段の事情のない限り、右食事休憩時間であっても、右管理保管上必要な監視等を免れえなかったもの、と解される。
 そうであれば、本件では、後記フェリー乗船中の場合を除き、右食事休憩時間中右管理保管の責任を免除された(或いは自ら放棄した)といえる特段の事情についての主張立証はないから、社外における右食事休憩時間については、原告らは、その間も、車両についての一定の監視等の業務に従事していたとみるべきである(なお、二人乗務のときには、一方が右責任を免除されていた可能性は存するが、二人の勤務分担等勤務の実情が不詳である以上、当然に、交互に実質的な食事休憩時間を取っていた、とまでいうことはできない)。
 従って、右食事休憩時間を勤務時間から控除すべき休憩時間と認めることはできない。
 (中 略)
 まず、右昼休みの時間帯に原告らが被告の社内にあったときについてみると、(書証略)(前記一一例についてのタコグラフ)、(人証・書証略)(右A総務部長による右一一例についてのタコグラフの分析表)、原告X本人尋問の結果(第一回)によれば、当時の原告Xの長距離勤務についての一一例では、長距離・近距離の運送から帰社した時刻にかかわらず、午後一時には被告の業務は動き出す関係上、午後一時以降一人休憩していられる状況ではなく、現に、遅くとも一時半頃までには、次の近距離運送に出発しており、、また、正午前に帰社したときは午後一時前に、次の近距離運送に出発した例もあり、右近距離運送の為の荷積に通常二、三〇分は要するので、結局、右昼休みの時間帯に帰社していても、休憩時間としては、全く取れない場合の方が多く、取れても、長くて三〇分程度しか取れなかった実情であったことが、認められ、特段の反証もないから、これが、当時の、被告社内における昼休みの一般的な実情であった、というべきである。
 そうであれば、問題となる長距離勤務の日の昼休み時間帯の実情につき、具体的反証のない限り、原告らは、当該長距離勤務日の右昼休み時間帯に被告社内にあっても、休憩時間を取っていなかった、との推定が働くというべきである。
 (中 略)
 従って、当該長距離勤務日における右昼休みの時間帯の原告らの勤務の実情につき、右反証乃至特段の事情の主張立証のない本件では、原告らは、当該長距離勤務日には、社内社外のいずれにあっても、右昼休みの時間帯に休憩時間を取っていなかった、といわざるを得ない。