全 情 報

ID番号 01313
事件名 地位保全仮処分命令申請事件
いわゆる事件名 間谷製作所事件
争点
事案概要  社内における政治活動を禁じた就業規則の規定等に違反するとして解雇された申請人が、従業員としての地位保全と賃金支払の仮処分を求めた事例。
参照法条 労働基準法34条3項
日本国憲法14条,
体系項目 休憩(民事) / 休憩の自由利用 / 休憩中の政治活動
裁判年月日 1967年7月28日
裁判所名 東京地
裁判形式 決定
事件番号 昭和41年 (ヨ) 2223 
裁判結果 認容
出典 労働民例集18巻4号846頁/時報504号88頁/タイムズ209号127頁
審級関係
評釈論文 川崎武夫・判例評論112号38頁/蓼沼謙一・月刊労働問題123号114頁
判決理由  ところで、使用者が就業規則によって労働者の企業施設内における政治活動を禁止する理由は、労働者のさような政治活動が会社の管理する企業施設の利用によって行なわれるときは、その管理を妨げるおそれがあり、就業時間中に行なわれるときは、その労働者のみならず他の労働者の労働義務の履行を妨げ、また就業時間外であっても休憩時間中に行なわれるときは、労働基準法三四条三項により保障された他の労働者の休憩時間の自由な利用を妨げ、ひいては作業能率を低下させるおそれがあることにあるものと思われるから、企業運営上の必要に基くものであって、社会通念に照しても合理性を欠くものとはいえない。もっとも、ここにいう政治活動は、労働者が就業時間外に行なう正当な組合活動ないし使用者に対する不満の表明等まで含むものと解するのは、明らかに妥当を欠くから、さような行動が、たとえ特定の政治的立場を打出して行なわれるため政治的色彩を帯びたにしても、これをもって直ちに右にいう政治活動と目することは避けなければならない。
 そして会社の就業規則中、社内における政治活動を禁止した前記規定は、その内容をみても、以上の趣旨を出ないから、公序に反しないものと解されるとともに、政治活動禁止の態様を労働者の政治的思想、信条によって異別にするものとは解されないから、これをもって憲法一四条、一九条、労働基準法三条に違反し、公序に反するものということもできない。
 (中 略)
 2 そして、右説示のように就業規則五九条、三五条九号に触れる債権者の政治活動を通観すると、債権者は参議院議員選挙の投票日(七月四日)をひかえた五月下旬から六月下旬にかけ、同僚等に対してベトナム戦争反対の署名運動及び日韓会談反対のデモへの参加勧誘をしたほか、日本共産党の政策等を宣伝し、また同党候補者Aへの投票を依頼したに尽き(その前後に政治活動をした事実を認むべき疎明はない。)、したがって右選挙を迎えて政治意識昂揚を抑えかねたものと推認されるが、右署名運動については会社従業員約一二〇名中、十数名に対し一回、その他の活動については四名に対し一回ないし五回あて(計一〇回)口頭または文書によって、いずれも単独に大げさな形でなく行なったにすぎないのみでなく、これによって従業員の休憩時間の自由利用を害し、作業能率を低下させ、また会社の施設管理を妨げる結果を来たす等、著しい実害があったものではないから、会社職制の注意にかかわらず行なったものである点を考慮しても、なお、これに対する懲戒処分として解雇をもって臨むのは余りにも酷に過ぎるものといわなければならない。