全 情 報

ID番号 01440
事件名 賃金請求事件
いわゆる事件名 駐留軍相模補給事件
争点
事案概要  「年次休暇の権利は、満一暦年につき、八時間勤務二〇日の割合で取得するものとする。一暦年中に常用従業員として採用された従業員は、常用従業員として採用された月及びその暦年の残りの各月につき、一二分の二〇の割合で与えられるものとする。」という基本労務契約の規定の適用を受ける在日米軍基地の常用作業員で、かつ年次途中に退職することが予定されていた者が、退職が予定されている月までの期間につき、一二分の二〇を越える年次休暇を請求した事例。(請求認容)
参照法条 労働基準法39条1項,2項
体系項目 年休(民事) / 労働契約の終了と年休
裁判年月日 1977年4月28日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和50年 (ワ) 7245 
裁判結果 認容(控訴)
出典 時報853号96頁/訟務月報23巻4号714頁
審級関係 控訴審/01443/東京高/昭54. 6.20/昭和52年(ネ)1284号
評釈論文 中嶋士元也・ジュリスト670号167頁
判決理由  「年休計算中段、後段の規定」において年度途中に常用従業員に採用された者につき年次休暇日数を制限する規定を設けているのは、原則に対する例外であるから、限定的に解釈すべきものであって、拡張したり類推することは特別の理由がない限り許されない。そして、年度途中に常用従業員に採用された者と年度途中に常用従業員の資格を失った者とでは、当該年度における勤務期間が一暦年に満たないという点において共通するところがあるとはいっても、正にそれだけの話であって、前年から常用従業員であった者と当年に常用従業員に採用された者とでは、他の労働条件においても差異があることは別にして、年次休暇に関しても異った取扱をすべき十分な理由があり、同一に論ずべきものではない。すなわち、前年から常用従業員であった者については、前記の全駐労と防衛施設庁との間の確認にも示されているように、無条件に取得した二〇日の年次休暇の権利を削減する問題にかかわるものであるのに対し、年度途中に常用従業員に採用された者については、労基法上も与える必要のない年次休暇につきいくばくの権利を付与するかという問題にすぎないのである。
 (中 略)
《証拠略》によれば、基本労務契約第七章A節3(休暇の使用)に「取得した休暇は、その取得した暦年内に使用しなければならない。」と規定されていることが認められるから、「満一暦年につき」が当年の一月一日から一二月三一日までの間にということで、年次休暇をとることができる期間を定めていることは疑いないし、「八時間勤務二〇日の割合」については、《証拠略》によりA節5(休暇の承認)a(休暇の期間)に「通常、休暇は、暦日単位で与えられるものとする。従業員が希望する場合には、休暇は、一時間を単位として与えることができるものとする。」と規定されていることが認められることも勘案すれば、八時間勤務として二〇日分、すなわち時間単位にすれば一六〇時間を暦日または時間を単位として年次休暇に使用できるという趣旨を有することは明らかであるが、「満一暦年につき、八時間勤務二〇日の割合」という文言から、右各趣旨を超えて、満一暦年継続勤務した場合に限り二〇日という趣旨を含むと解することは困難であり、いわんや勤務時間が満一暦年に満たない場合は月割ないし日割(そのいずれによるかも不明である)の按分によって年次休暇日数を削減するという趣旨までも含むと解することは到底不可能である。
 (中 略)
 (三)そうすると、他に、前年から常用従業員であった者が年度途中に退職する場合(退職時期が確定的に予定されているか否かを問わない)の年次休暇日数を削減する趣旨の規定が見当らないが、前記のように前年から常用従業員であった者は無条件に満一暦年につき二〇日の年次休暇の権利を取得することが確認されており、現行基本労務契約の規定上も肯認されるところであるから、年度途中退職の場合に年次休暇日数を削減することは右権利制限の問題として明文をもって規定することを要すると解すべく、そのような規定がない以上これを削減することは許されないといわなければならない。