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ID番号 01459
事件名 仮の地位を定める仮処分申請事件
いわゆる事件名 倉敷紡績事件
争点
事案概要  未成年者たる元従業員が退職願は親権者がほしいままに作成したものであるとして労働契約の合意解約の効力を争い、地位保全の仮処分を申請したところ却下されたため抗告していた。(原決定取消、差戻し)
参照法条 労働基準法56条1項
民事訴訟法(平成8年改正前)49条
体系項目 年少者(民事) / 訴訟能力
裁判年月日 1960年12月27日
裁判所名 名古屋高
裁判形式 決定
事件番号 昭和35年 (ラ) 177 
裁判結果 取消差戻
出典 高裁民集13巻9号849頁/労働民例集11巻6号1509頁/時報250号24頁/裁判所時報321号5頁
審級関係
評釈論文 後藤清・判例評論35号12頁/労働判例百選〔ジュリスト252号の2〕220頁
判決理由  民事訴訟法第四九条本文は未成年者は法定代理人に依ってのみ訴訟行為を為すことが出来る旨規定しているが、労働基準法第五六条一項は「満十五才に満たない児童は、労働者として使用してはならない」と規定しているから満十五才未満の児童は別として、同法第五十八条と対比すると、労働契約の締結は未成年者保護と親権者の権利の濫用の防止の立場から満十五才以上の未成年者が自らなすべきで、親権者又は後見人は代ってなすことが出来ないところであるから、(尤も使用者は満十二才以上満十五才未満の児童の使用については、同法第五七条第二項、第五六条第二項により修学に差し支えないことを証明する証明書及び親権者又は後見人の同意書を事業場に備え付けなければならないか、親権者又は後見人において未成年者に代って労働契約を締結出来ないか、右使用について親権者又は後見人の同意が必要である)、満十五才以上の未成年者は労働契約に関する訴訟について訴訟行為を自ら有効になすことが出来ると解する(民事訴訟法第四九条但書)。本件では抗告人は昭和一六年一〇月一八日生れで満十五才以上であることは記録上(本件記録六〇丁以下の戸籍謄本)認めることが出来るから、抗告人自ら弁護士を訴訟代理人に選任し本件申請を為したのは不法でない。