全 情 報

ID番号 01606
事件名 解雇無効確認請求寄宿舎明渡請求併合事件
いわゆる事件名 鐘ケ淵紡績事件
争点
事案概要  経歴詐称を理由とする懲戒解雇にともない、被解雇者に対する寄宿舎規則に基く退去義務が争われ、これを認容した事例。
参照法条 労働基準法89条1項9号,10章
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 経歴詐称
寄宿舎・社宅(民事) / 寄宿舎・社宅の利用 / 被解雇者・退職者の退去義務・退寮処分
裁判年月日 1950年3月17日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 昭和23年 (ワ) 1462 
昭和23年 (ワ) 1766 
裁判結果
出典 労働民例集1巻1号86頁
審級関係
評釈論文
判決理由  〔懲戒・懲戒解雇―懲戒事由―経歴詐称〕
 而して被告会社の就業規則第七十五条が、懲戒解雇の場合の基準は次の通りとするとし、其の第一号に「経歴を詐り其他詐術を用いて雇傭された者」と規定して居ることは、前掲乙第五号証に依り認めることができる。原告X1が前認定のように経歴を詐ったことは同条第一号に該当することは明かであるし、原告X2が前認定のような方法で年齢を詐ったことは右規定の其他詐術を用い雇傭された者というに該当すると解するのを相当とするから、被告会社が原告等を解雇したことは正当であると謂うべく原告等主張のような不当なものでないことは勿論、右解雇は無効ではない。然らば原告が右解雇を無効なることの確認を求める請求は失当であるから之を棄却する。
 〔寄宿舎・社宅―寄宿舎の利用―被解雇者の退去義務・退寮処分〕
 被告会社の寄宿舎規則第十六条には従業員としての身分を失った者は速かに退舎しなければならない旨の規定があることを認めることが出来るから、前認定の通り原告両名は昭和二十三年九月六日被告会社から解雇され、被告会社の従業員としての身分を失ったのであるから、同日限り原告X2は主文第二項記載の寄宿舎から、原告X1は主文第三項記載の寄宿舎から夫々退去すべき義務があることは明かである。従つて原告両名に対しその退去明渡を求める請求は正当であるから之を認容する。
 成立に争のない乙第十一号証、証人A(第二回)及Bの証言を綜合すると、原告等は被告を被申請人として大阪地方裁判所へ右寄宿舎に関し占有妨害禁止の仮処分命令を申請し該申請を許容する旨の仮処分決定を得たこと、被告会社は原告等を被申請人として右寄宿舎明渡請求権保全の仮処分命令を申請し、該決定(明渡断行命令)を得て、その執行を為したが、その際原被告と協議の上、被告は原告等に対し本件解雇無効確認事件の判決確定する迄原告等を一時的に主文第四項記載の寄宿舎に居住せしめることとしたことを認めることが出来る。前認定の通り被告の為した原告等の解雇が正当なものであり、原告等の解雇無効確認の敗訴の判決確定した際は、原告等は右協定に依る寄宿舎使用も亦、原告等は為し得なくなることは、右協定の趣旨に依り明かである。主文第四項記載の寄宿舎の明渡義務はその際現実に発生するのであるが、原被告間の本件訴訟から観察すると、その際原告等が直ちに明渡すか否か疑問とするところであるから、予め其の請求を為す必要があるものと認め、右の明渡を求める請求も亦正当として之を認容することとする。