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ID番号 01617
事件名 損害賠償請求事件
いわゆる事件名 池袋労働基準監督署事件
争点
事案概要  皆勤手当に関する就業規則の規定の不利益変更、深夜手当の不払い等の事実についての申告があったにもかわらず使用者に対する監督権を発動しなかった労働基準監督官の不作為を使用者の不法行為を幇助するものとして、国に対して損害賠償が求められた事例。(請求棄却)
参照法条 労働基準法104条1項
国家賠償法1条
体系項目 監督機関(民事) / 監督機関に対する申告と監督義務
裁判年月日 1978年3月15日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和49年 (ワ) 4631 
裁判結果 棄却(控訴)
出典 労働判例294号27頁
審級関係 控訴審/01618/東京高/昭53. 7.18/昭和53年(ネ)739号
評釈論文
判決理由  二 原告は、右のとおりA監督官に対し、労基法違反の事実を申告し、賃金台帳等の検査の必要性並びに消滅時効についての意見を具申したにかかわらず、同監督官はこれに対して何らの措置をとらず結局訴外会社の原告に対する皆勤手当及び割増賃金等不払の不法行為を幇助したと主張するので、この点について見るに、訴外会社の原告に対する不法行為の成否は暫く措くとして、原告が主張するA監督官の不作為によって幇助による共同不法行為が成立するというためには、右不作為がA監督官の作為義務に違反したものであることを要するところ、労基法一〇四条一項は、労働者は、事業場に同法又は同法に基づき発せられた命令に違反する事実がある場合にその事実を行政官庁又は労働基準監督官(以下「監督官等」という。)に申告することができる旨規定するのであるが、右にいう申告が労働者が監督官等に対してする労基法違反の事実の通知又は通報を意味するものであることは法令の通常の用語例に照らして明らかであるのみならず、これと労基法が右申告に対応する監督官等の義務として、同法所定の事実の調査その他職権の行使をなすべき旨の規定を設けていないことを併わせ考えると、右申告は、監督官等に対し、単に労基法所定の監督権の発動を促すだけの意義を有するにすぎないものと解されるのであって、右のように労働者の労基法違反の事実の申告に応じ監督官等が監督権を行使すべき職務上の義務を負担するものでない以上、A監督官が原告がした前記労基法違反の事実の申告及び意見の具申に対応した監督権の行使をしなかったからといって、それが直ちに原告の主張する訴外会社の不法行為の幇助にはならないのであるし、そのほかに原告は、A監督官が原告の主張する訴外会社の不法行為に積極的に関与し、これを容易ならしめたことについては何らの主張も立証もしないのであるから、原告のこの主張は、爾余の判断を用いるまでもなく失当たるを免れない。