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ID番号 01629
事件名 予告手当等請求事件
いわゆる事件名 萩野電機商会事件
争点
事案概要  被告に解雇された労働者が、右解雇は労基法に違反するものであるとして予告手当、附加金を請求した事例。
参照法条 労働基準法20条,114条
体系項目 雑則(民事) / 附加金
裁判年月日 1959年6月20日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和33年 (ワ) 5877 
裁判結果
出典 労働民例集10巻3号612頁/時報189号29頁
審級関係
評釈論文
判決理由  労働基準法第一一四条が予告手当等の未払があった場合に使用者に対し附加金の制裁を課することにより使用者の同法第二〇条等違反を予防し、しかも裁判所が労働者の請求により予告手当等の支給を受けなかった労働者のためにその未払額と同額の附加金の支払を命ずることとした制度から見れば、同法第二〇条等違反の使用者が附加金の制裁を免れるためには遅くとも労働者が裁判所にその支払を請求するまでに予告手当等を弁済せねばならないと解するのが相当と思われる。
 蓋し、労働者が附加金の請求をしてから、使用者が予告手当等の弁済をしても、なお附加金の制裁を免れるものとすれば、使用者は附加金請求が裁判所に係属しても、その事実審の口頭弁論終結時までに予告手当等の支払をすれば特段の不利益を受けない結果になるのに反し、労働者側は予告手当等の支払の遅滞を受けているにもかかわらず、附加金請求の点について敗訴を免れない結果になるから、労働基準法第一一四条が使用者に制裁を課することにより自発的に予告手当等を支払わせ、同法第二〇条等違反を予防し、あわせて予告手当等の支払遅延を受けた労働者の利益をも計らんとした立法趣旨は達せられないからである。
 しかし、労働基準法第一一四条によれば、附加金の支払を命ずべき要件の一つである同法第二〇条違反については、単に同条等違反があれば足り、その外に特に被告主張のような違反をした使用者に対し特別の帰責事由の存することを要件とするものでないことは明白である。
 ただ使用者が天災事変等の不可抗力によって予告手当等を支払うことができなかったような例外の場合には、裁判所も附加金の支払を命じ得ないものと解されるが、被告主張の原告らの解雇当時の事情は、結局経営不振のため予告手当支払の資金が意の如くならなかったというに帰着するから、労働基準法第一一四条による附加金の支払を命じ得ない不可抗力にあたる事情とならないことは明白である。