全 情 報

ID番号 01679
事件名 仮処分抗告申立事件
いわゆる事件名 京成電鉄事件
争点
事案概要  「職務上の義務に違反し又は不正の行為をしたとき」に該当するとして、懲戒委員会の決議を経て懲戒解雇した事例につき、懲戒決定書に瑕疵があり無効と主張された例。
参照法条 労働基準法89条1項9号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒手続
裁判年月日 1950年11月29日
裁判所名 東京高
裁判形式 決定
事件番号 昭和25年 (ラ) 95 
裁判結果
出典 労働民例集1巻5号822頁
審級関係
評釈論文
判決理由  労働協約附属の懲戒規程第十一条によれば懲戒委員会は会社側と組合側において選出した同数の委員を以って構成せられるものであることは、抗告人ら主張の如くであることを認め得るが、「会社側と組合側において選任した同数の委員」とは、制度上懲戒委員会の委員数は会社側と組合側とが同数たるべきことを意味するものであり、具体的に開催される懲戒委員会において会社側と組合側との同数の委員が出席することを要する趣旨でないことは、右の規程を一読して直ちに明白なところである。しかして乙第二十五号証によれば右懲戒委員会は慣行上会社側及び組合側各七名の委員を以って構成せられ、会社側及び組合側の各委員の半数以上の出席を以って委員会の成立並びに決議要件としたことが認められ、本件懲戒処分を為した懲戒委員会が会社側四名、組合側七名の委員の出席の下に開かれ全員一致を以って懲戒処分として解雇の決議を為したことも又、同号証により明らかである。
 抗告人らは会社側委員A運輸係長は右懲戒委員の最も重要なる審議の際出席していなかつたと主張するけれども、委員会の開催中偶々一委員が一時その席にあらざりし一事によって委員会の決議に何らの影響を及ぼすものではない。しからば本件懲戒処分を決定した懲戒委員会の決議自体は何ら懲戒規程に違反したものとは認め難い。しかして右懲戒規程は懲戒が決定したときは懲戒決定書を作成すること及び懲戒を受くべき者にこれを交付することを規定するが、右懲戒規程を見るとき既に懲戒処分が有効に決定した以上、たとえ懲戒決定書の記載に瑕疵ありとしても、懲戒決定書なるものを作成し又これを本人に交付するときは、懲戒処分そのものが無効となるものとは解し難く、本件において懲戒決定書なるものを作成し且つこれを抗告人らに交付したことは認め得るところであるから、結局第一の抗告理由は採用に値しない。